← 回到 虎山溫泉會館(湯之島)-泰安溫泉

「ここ、本当に島なの?」

「ここ、本当に島なの?」
君が不思議そうに首を傾げた。虎山溫泉會館(湯之島)-泰安溫泉のロビーを抜け、部屋へと向かう廊下。足裏に伝わるカーペットの柔らかな弾力と、どこか懐かしい木の香りが、旅の緊張を心地よい倦怠感へと変えていく。
「わからない。でも、外界から切り離された秘密の場所に迷い込んだ気分だね」
私は手の中にある重い鍵を指先で転がしながら、ふっと笑った。答えを出すことよりも、この不確かさを分かち合う時間が、今の私たちには必要だった。

湯気に溶けていく、名前のない距離

部屋に足を踏み入れると、まず目に飛び込んできたのは、素朴ながらも温かみのある石の質感だった。裸足で踏みしめた床のひんやりとした温度が、外の湿った秋の空気と混ざり合い、肌を心地よく引き締める。ここへ辿り着くまでに渡った吊橋の、あの心細いほどの揺れが、かえってこの空間の静寂を際立たせていた。9月の苗栗は、もう夏の熱気を脱ぎ捨て始めている。深呼吸をすると、森の深い緑が凝縮されたような、クリスプで澄んだ空気が肺の隅々まで満たされていくのがわかった。

バスルームの扉を開けると、そこには濃密な白い世界が広がっていた。私人冷熱水浴の湯船から立ち上る湯気が、部屋の隅々まで静かに浸食している。その白さは、視界を遮る壁ではなく、二人を優しく包み込む繭のようだ。お湯に身を沈めたとき、肌にまとわりつく水の重みが、日々の生活で強張っていた思考をゆっくりと解きほぐしていく。石の縁に腕を乗せると、熱い湯と冷たい石の境界線が、指先で小さく震えた。

私たちは、あまり多くを語らなかった。ただ、同じ温度の湯に浸かり、湯気の向こうに揺れる相手のシルエットを眺める。言葉で埋めようとしなくていい。ただそこに、同じ周波数で呼吸している誰かがいる。その事実だけで、十分すぎるほど満たされていた。もしかすると、私たちが本当に求めていたのは、完璧な理解ではなく、こうした「心地よい不確かさ」を共有できる時間だったのかもしれない。

夕食に運ばれてきた鱘魚火鍋の、濃厚な出汁の香りが鼻腔をくすぐる。地元の山菜を一口食べると、土の香りと共に、控えめな甘みが口の中に広がった。熱々のスープを分け合い、温かい飲み物を口に運ぶ。その単純な動作のひとつひとつが、贅沢な儀式のように感じられた。夜が深まるにつれ、窓の外の谷底から聞こえてくる風の音が、遠い記憶のように心地よく響く。ここでは、時計の針が進む速度よりも、お互いの体温が伝わる速度の方がずっと重要に思えた。

ベッドに潜り込んだとき、リネンのパリッとした清潔な感触が肌に触れた。部屋の灯りを消すと、天井にわずかに差し込む月光が、静かなリズムを刻んでいる。隣にいる君の呼吸が、ゆっくりと深く、安定していく。その音を聞きながら、私は自分の心の中にある小さな空白が、温かな湯気で満たされていくのを感じていた。何かが解決したわけではないけれど、今のままでいい。この場所で、この温度で、ただ一緒にいられること。それが、今の私たちにとっての正解なのだという気がした。

谷底に漂う深い静寂が、明日まで私たちを優しく守ってくれるだろう。

  • 夜の屋外プールで、星空の下、お互いの体温だけを感じてみませんか。
  • 朝の澄んだ空気の中、近くの豆腐街までゆっくりと散歩するのがおすすめです。