トタン屋根を激しく叩く雨の音。午後になると決まって訪れる苗栗の雷雨が、日出溫泉渡假飯店のバリ風の屋根を激しく打ち鳴らしていた。湿った土の香りが風に乗り込み、薄暗いリビングに身を寄せ合った私たちにとって、その騒がしさはむしろ心地よい繭のような壁となり、外の世界から切り離された深い安心感を与えてくれた。
「ねえ、お湯が石鹸みたいにツルツルするよ!」という下の子の弾んだ声。家族四人が余裕で浸かれる広々とした客室のお風呂で、42℃の炭酸水素塩泉に足を浸した瞬間、子供が不思議そうに叫んだ。肌にまとわりつくような滑らかな質感と、立ち上る白い湯気の向こうに見える家族の笑顔は、この場所が私たちにくれた「今は急がなくていいよ」という静かな合図だった。
朝食のテーブルで、陶器の器が小さく触れ合う音。窓の外に広がる深い山々の緑を眺めながら、湯気の立つ地瓜粥に、少し酸味のある豆腐乳を添えて。夫が「この味、懐かしいな」と低く呟いたとき、私たちは同じ記憶の周波数を共有していることに気づいた。豪華なメニューよりも、こうした素朴な味が、心の一番深いところにある郷愁を呼び覚ます。
屋外風呂の向こう側から聞こえてきた、サルの鋭い鳴き声。肌を刺すような冷たい山の空気と、身体を芯から包み込む熱いお湯の鮮やかなコントラストの中で、私たちはただ黙って野生の気配に耳を澄ませていた。人間がコントロールできない生命の鼓動がすぐそばにあるという感覚が、日常のしがらみを洗い流し、不思議と自由な気持ちにさせてくれた。
部屋に戻ったあとの、厚手のバスタオルが床に落ちる鈍い音と、それに重なる誰かの笑い声。チェックイン時に感じた心地よいアロマの香りが漂う日出溫泉渡假飯店の空間で、子供たちが走り回り、大人が心地よい疲労感でため息をつく。整理整頓された完璧な休日ではなく、少しだけ散らかったこの時間が、今の私たちにとって一番心地よい家族の形なのだろう。
雨上がりのテラスで、濡れた椰子の葉から雫が静かに落ちるのを、いつまでも眺めていた。
- 朝食の地瓜粥と豆腐乳を、山の景色と共にゆっくり味わってみてください。飾らない味が、旅の記憶を鮮明にします。
- 屋外の露天風呂では、あえて会話を止めて、山の静寂と野生の猿の声に耳を傾ける時間を作るのがおすすめです。