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5年後も、指先に残っているはずの断片

5年後の私たちへ。

あの時の8月、苗栗の空気は驚くほど重かった。でも、私たちはその湿り気を笑い飛ばしていた。肌に張り付くシャツと、止まらない冗談。あなた信じられないだろうけど、あの不自由さこそが、最高の贅沢だったという気がする。私たちはただ、そこにいた。それだけで十分だったはずだ。

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5年後も、指先に残っているはずの断片

屋上の湯船と、遠くの雷鳴:肌を刺すような熱い湯に身を委ね、視線を上げた先にあったのは、濃い灰色に塗り潰された8月の空。遠くで低く唸る雷の音が、鼓膜をわずかに震わせる。熱い湯と冷たい風が同時に肌を撫でるあの矛盾した感覚に、私たちは言葉を失い、ただ空の色が変わるのをじっと待っていた。タオルで顔を拭った時の、少しざらついた感触。湯船から上がった後の、肌がぴりぴりとする感覚。あの静寂は、どんな音楽よりも雄弁だった。

鴛鴦鍋の湯気で消えた顔:テーブルいっぱいに広げられた鴛鴦鍋から立ち上る、濃厚な出汁の香りと白い湯気。誰が一番先に食材を奪うかという、くだらない賭けに興じたこと。湯気の向こう側で、友人の顔がぼやけて、笑い声だけが輪郭を持って響いていた。箸が鍋の縁に当たるカチカチという音と、濃厚なスープが喉を通る時の心地よい刺激。あのとき、私たちはただ、空腹と快楽に忠実だった。というか、食欲こそが唯一の正解だった。

迷い込んだ雨の山道:ナビが指し示す方向をわざと無視し、突き当たったのは深い緑に飲み込まれた行き止まり。不意に激しい雨が降り出し、フロントガラスが白く塗り潰された。ワイパーが激しく左右に振れる音を聞きながら、車内に閉じ込められた私たちは、あまりの状況に絶望し、そして同時に、腹を抱えて笑い転げた。濡れた土の匂いと、車内の密閉された熱気。あの行き止まりこそが、この旅で一番「私たちらしい」場所だった。

裸足で踏んだタイルの冷たさと、深い眠り:部屋のドアを開け、エアコンの冷気が肌を撫でた瞬間、裸足で踏み出したタイルのひんやりとした感触。日式拉門を閉める時の、小さく乾いた音。一日中、夏の熱に晒されていた足裏から、じわじわと疲れが吸い出されていく。バスローブの厚い生地が肩に触れる重みと、石鹸の清潔な香りが鼻腔をそっとくすぐる。白いシーツに体を沈めたとき、自分の境界線が消えていくような感覚。豪華な設備よりも、その温度差がもたらす安堵こそが、私たちを深い眠りに誘った。

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5年後の封印を解いたとき

おそらく、あの時食べた料理の正確な味や、誰が何を言ったかという細部は、砂時計の砂のようにこぼれ落ちてしまう。けれど、心の中で固く結ばれていた、目に見えない緊張の結び目が、少しずつ緩んでいくあの感覚だけは、皮膚の記憶として残っているはず。享沐時光莊園渡假酒店の、静まり返った廊下を歩いたときの、自分の足音の響き。それは、誰かの期待に合わせるのではなく、自分の呼吸に合わせて歩き出した合図だったのかもしれない。私たちは互いに違うリズムで生きていたけれど、あの場所の静寂が、不思議と心地よい共通の拍子を作ってくれたという気がする。忘れかけていた記憶の端っこを、ふとした瞬間に誰かが突き、またあの夏の湿った風が、首筋を撫でる。そのとき、私たちは再び、あの不自由で自由な旅人に戻れる。

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氷が溶け切るまで、私たちはただ、青い部屋にいた。

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  • 苑裡の街で、あえて地図を持たずに歩き、路地裏の匂いを探してみること。
  • 江技旧記のワンタンを、一番暑い時間帯に、汗をかきながら食べる贅沢を。