「ねえ、誰がここを『歩いて5分』って言った? 正解を教えてよ。今すぐ」
誰かが、汗ばんだ首筋を乱暴に拭いながら吐き捨てた。手に持った大量のショッピングバッグが、歩くたびにガサガサと不快な音を立て、指に食い込んでいる。
「地図にはそう書いてあったし! というか、途中でタピオカ店に寄って、あそこで15分も喋ってたのが悪いんでしょ」
「言い訳の天才だね。本当に才能あるよ。もう足が棒。というか、もはや人間としての機能を停止して、ただの歩行機械になってる」
「賭けてもいいけど、このままだと誰か一人、道端で力尽きて寝るよね」
笑いながら、けれど本気で疲れた顔をして、私たちは台中の一中街を彷徨っていた。三月の湿った空気が肌にまとわりつき、どこからか漂う甘い揚げ物の香りと、絶え間なく鳴り響くバイクのクラクションが、私たちの疲労感を心地よい興奮へと塗り替えていく。
喧騒を遮断する、四角い静寂
重いドアを閉めた瞬間、世界から音が消えた。來來商旅の客室に足を踏み入れたとき、最初に感じたのは、外の喧騒が嘘のように遠のいたことだ。耳の奥で鳴り止まなかった街のノイズが、ふっと消え、代わりに静謐な空気が全身を包み込む。
裸足で踏んだフロアのひんやりとした温度が、火照った足裏から熱を奪い、混濁していた思考をクリアにする。部屋は驚くほど広々としており、誰かがどさっと荷物を床に放り出した音が、心地よい余韻を持って反響した。この空間の余裕こそが、旅の緊張を解きほぐす特効薬になる。狭い部屋で肩を寄せ合うのも旅の醍醐味だが、大人の旅には、この「誰にも干渉されない空白」という贅沢が必要なのだ。
視線を走らせると、ベッド脇に整然と並ぶコンセントが目に入った。旅において、電源の確保は生存戦略に近い。充電器を巡って誰がどこのポートを使うかで言い争う、あの不毛な時間を過ごさなくていい。ただ、そこにプラグを差し込む。電気が流れ込み、画面が灯る。その単純な動作に、言いようのない安心感を覚えた。
ベッドに体を投げ出すと、シーツのパリッとした感触が肌を撫で、かすかに漂う洗剤の清潔な香りが鼻をくすぐった。マットレスの沈み込み具合が絶妙で、深く、けれど底付き感のない抱擁に包まれる。天井を眺めながら、私たちはしばらくの間、何も話さなかった。静寂があることで、ようやく自分たちが「旅をしている」という実感が、ゆっくりと体温のように広がっていく。外ではまだ、誰かが誰かを呼び止める声や、バイクの排気音が鳴り響いているはずだ。けれど、ここではそのすべてが、ただの心地よい背景音に変わっていた。明日の朝は、ホテル自慢の無料朝食でエネルギーを補給しようと、心地よい眠気がゆっくりと降りてきた。
午前二時の、不器用な肯定
「ねえ、結局今回のプラン、めちゃくちゃだったよね」
部屋の照明を落とし、間接照明だけが壁を淡い琥珀色に染めている。隣で静かな寝息を立て始めた誰かを避けて、私たちは声を潜めて、秘密の共有のように話し始めた。
「最高にめちゃくちゃだった。まあ、それが正解だったのかもしれないし」
「どのへんでそう思った?」
「迷子になって、たまたま見つけた路地裏の店が、人生で一番美味い点心を出してたとき。あそこで、計画通りに動くことの無意味さを悟ったよ」
「ふふん。私のナビ能力が低かったおかげだね」
「あぁ、本当に。君の方向音痴には敬意を表するよ」
冗談めかして言い合うが、声のトーンは低く、どこか穏やかだ。昼間の刺々しさは消え、代わりに、言葉にできない信頼のようなものが、夜の静寂に溶け込んでいる。完璧な旅なんて、きっと退屈で仕方ない。予定通りにすべてが運んだとしたら、私たちは今頃、誰が誰のせいで遅れたかという、この愛おしい話題さえ持たなかっただろう。
「また来ようか。次はもっと、めちゃくちゃな計画を立てて」
「いいよ。その代わり、次は私がナビをする」
「それは人生で一番怖い選択肢だね」
私たちは小さく笑い合い、再び深い静寂に身を任せた。三月の夜は、短くて、けれど十分すぎるほど濃い。窓の外でかすかに聞こえる街の呼吸が、心地よいリズムとなって、私たちの意識をゆっくりと眠りへと誘っていく。
窓の外、三月の淡い光が、まだ眠っている誰かの頬を優しく撫でていた。
- 一中街の路地裏で、地元の人だけが知っている、少し甘すぎる台湾スイーツを探してみること
- 早起きして台中公園まで散歩し、春の風に吹かれながら、あえて目的地を決めずに歩くこと