6月の台中。焼けたアスファルトから立ち上るむせ返るような匂いと、肌にまとわりつく湿った熱風。誰が傘を忘れるか賭けたけれど、結果的に全員が忘れた。不意に降り出した激しい雨に打たれ、逃げ込むように足を踏み入れたのが「臺中勤美洲際酒店 InterContinental Taichung」のロビーだった。自動ドアが開いた瞬間、外の喧騒がふっと消え、冷ややかな空気が汗ばんだ肌を心地よく撫でる。信じられないけれど、この絶望的な状況で私たちは最高のチームになれた気がした。
完熟のマンゴー。舌の上でとろける濃厚な甘みと、喉を通り抜けるひんやりとした温度。白い磁器の皿の上に置かれた鮮やかな黄金色は、この季節の正解そのものだ。指先に残るねっとりとしたベタつきさえ、今は愛おしい。この圧倒的な甘さにすべてを委ねて、思考を停止させてしまいたくなるような、そんな贅沢な気分だった。
「ねえ、この部屋のAI、君のこと拒絶してない?」スマート家電の操作に手こずり、パネルの前で途方に暮れる友人を横目に、私は静かに笑う。最新鋭の設備に翻弄され、ボタン一つに格闘する姿は、ある意味でこの旅のハイライトかもしれない。結局、誰が一番早く照明を落とせるかという、どうでもいい勝負に貴重な時間を使い切った。
ダイソンのドライヤー。あの暴力的なまでの強風で、誰の髪が一番ひどい形になるか競い合った。鏡の中に映るのは、静電気で爆発した頭をした三人の大人。一秒の沈黙の後、同時に吹き出した。最高級の設備に囲まれているのに、やっていることは小学生のいたずらと同じ。でも、その不釣り合いさが心地よかった。
午前六時の草悟道。窓の外に広がるのは、雨に洗われた深いエメラルドグリーンの世界。空気はしっとりと重く、街全体がまだ深い眠りについているような、静謐な青色の時間。180×200センチの広大なベッドに深く沈み込みながら、私たちはしばらく何も話さなかった。心地よい重さを伴った沈黙が、ゆっくりと部屋を満たしていく。
指先に微かに残る、バイレードの洗練された香り。裸足で踏みしめたタイルの、ひんやりとした滑らかな感触。ベッドからネスプレッソのマシンまで、ゆっくりと数歩。臺中勤美洲際酒店 InterContinental Taichungの55平方メートルの空間には、日常では味わえない贅沢な空白が横たわっている。その余裕が、私たちの心を静かに解きほぐしていった。
午後の激しい雷雨。予定していた観光ルートをすべて捨てて、ホテルのプールで雨粒が水面に描く無数の波紋を眺めていた。計画通りにいかないことこそが、一番正しい旅の形なのだと思う。濡れたまま肩を寄せ合い、意味のないことで笑い合う。それだけで、十分すぎるほど贅沢な時間だった。
卒業。これからどこへ向かうべきか、正解のない不安に押しつぶされそうになる。けれど、この部屋の柔らかな白いシーツに包まれている間だけは、その空白さえも心地よい。欠けている部分があるからこそ、新しい何かが入り込む余地がある。私たちはただ、ここに在ることを許されていた。
止んだ雨の匂いと、まだしっとりと濡れている舗道。
- 草悟道をあてもなく歩いてみて。雨上がりの緑が本当に綺麗だから。
- 朝食のロブスター粥は反則級の美味しさ。絶対食べてほしい。