← 戻る 亀の井ホテル 有馬

肌に残った塩分が、昔の冗談みたいな味がした

肌に残った塩分が、昔の冗談みたいな味がした

有馬の冬に挑んだ、私たちの「無謀な挑戦」記録

駅から徒歩20分の強行軍:12月の神戸の風は、まるで凍った針で肌を刺されるような鋭さだった。「ここを乗り越えれば本物の旅人だ」と意気込んだものの、開始5分で足先の感覚が消え、全員が「やっぱりシャトルバスがいい」と情けない声を上げた。結果、誇り高き冒険心は気温8度という残酷な現実の前にあっけなく崩壊し、敗北感と共にバスに飛び乗った。冬の灰色の空の下、震える歯の音が心地よいリズムを刻んでいたのが今では笑える。

金泉の耐熱選手権:誰が一番長く、濃厚な金泉に浸かり続けられるかという不毛な賭けを始めた。立ち上る真っ白な湯気と、鼻をくすぐる独特の鉄分を含んだ香りに包まれ、私たちは液体状の黄金に深く潜った。結果、勝敗が決まる前に全員が茹で上がったタコのように真っ赤になり、同時に脱衣所へ逃げ出した。けれど、あの肌にまとわりつく重厚な湯の感触は、心の隙間まで温めてくれる不思議な安心感があった。

金泉焼を主食にする節約プラン:街に漂う醤油の香ばしい匂いに抗えず、金泉焼を大量に買い込んだ。外はカリッと、中はもちっとした食感に、口いっぱいに広がる出汁の旨味。「これで十分だ」と根拠のない自信に満ち溢れていたが、結果、空腹という本能には勝てず、深夜にルームサービスを注文してプランは開始1時間で破綻。節約よりも食欲という、至極当たり前の結論に辿り着いた夜だった。

大人のクリスマス・カウントダウン:洗練された大人の夜を演出して、12月の締めくくりを優雅に過ごそうと計画した。しかし、心地よい照明の下、ふかふかのベッドに身を沈めた瞬間、緊張の糸がぷつりと切れた。結果、深夜3時まで「誰が一番恥ずかしい過去を持っているか」という泥沼の言い合いに没頭。結局、計画していたイベントよりも、この不毛で贅沢な会話こそが最高のハイライトとなった。

旅のスコアボード:不完全さという名の満点

結局、この旅で一番価値があったのは、すべてが計画通りに失敗したことだった。亀の井ホテル 有馬のコンフォートツインに足を踏み入れたとき、裸足に伝わる床の穏やかな温度と、窓の外に広がる冬の静寂に、張り詰めていた心がふっと緩んだ。シーツのパリッとした冷たさが、湯上がりで火照った肌に心地よく馴染む。ぶかぶかの浴衣を着て、まるで巨大なマシュマロのように部屋を歩き回る友人の姿に、私たちはただただ笑い転げた。金泉の湯上がりに肌に残ったわずかな塩分のような質感は、金泉焼の焦げた醤油の層に似ている。外側は少し硬くてぶつかり合うけれど、中身は粘り気のある甘い餅のように切り離せない。そんな不器用な繋がりこそが、私たちの正体なのだろう。

冬の夜の静寂に、誰かの笑い声だけが溶けていた。窓の外には、淡い雪が舞い始めていた。

  • 金泉焼を、火傷しそうなほど熱いうちに口に放り込んでみて。その熱さが、冬の神戸の記憶を固定してくれるはずだから。
  • シャトルバスの窓から流れる景色を眺めながら、あえて「次の目的地」を決めずに、ただぼーっとすることに挑戦してみて。