← 戻る ホテルニューアカオ ホライゾン・ウイング

濡れたサンダルの音が、廊下に吸い込まれていく

濡れたサンダルの音が、廊下に吸い込まれていく

熱海の記憶を奏でる、五つの音色

「ペタ、ペタ」。雨に濡れたサンダルが、厚みのあるカーペットを叩く湿った音。末っ子が水溜まりを飛び越えようとして失敗し、そのまま廊下を歩いた時の音だ。ホテルニューアカオ ホライゾン・ウイングの廊下には、どこか懐かしい昭和レトロな空気が漂い、家族が持ち込んだ騒々しさを静かに吸い込んでくれるスポンジのような包容力がある。賑やかさが消えるのではなく、心地よい重みに変わっていく感覚に、ふっと肩の力が抜けた。

「カチャカチャ」。シアターレストランで、フォークが皿に当たる乾いた音。長男が、窓の外に広がる相模湾の深い青を眺めながら「一番大きな魚を食べるんだ!」と宣言し、必死に切り分けていた。空間があまりに広いため、その小さな音さえも高い天井へと旅をして溶けていく。子供の底なしの食欲が、目の前の広大な海と同期しているようで、その生命力に胸が熱くなった。

「ザァー」。温泉の湯が肩に落ちる、重く温かい水の音。隣でパートナーが、肺の奥から絞り出すように深く、長い吐息をついた。それは「癒やされた」という綺麗な言葉よりも切実な、一日中子供を追いかけ回して張り詰めていた心身が、重力に負けて緩んだ音だ。湯気に包まれ、ほのかな硫黄の香りと共に、思考がゆっくりと白濁して溶け出していく。

「シャー」。早朝、ホライゾン・ウイング客室のカーテンを引いた時の、厚い布が擦れる音。窓の外には6月特有の濃い青色の海が広がっていて、その冷ややかな光が部屋の中にじわじわと浸透してくる。ベッドの中で子供たちが絡まり合って眠る、規則正しい呼吸の音。それはまるで静かな潮の満ち引きのように、部屋全体の空気をゆっくりと揺らしていた。

「カチッ」。夜、缶詰BAR「缶蔵」で缶を開けた時の、小さく鋭い金属音。子供たちがようやく眠りにつき、大人の時間だけが静かに流れる。ふと、末っ子のお気に入りのぬいぐるみを家に忘れてきたことに気づき、「あはは」と顔を見合わせて小さく笑った。計画通りにいかない不完全さが、旅の輪郭を一番はっきりとさせてくれる。

雨上がりの冷たい空気を吸い込み、明日もまた、誰かが何かをこぼす音を聞きたい。

  • 夜の「缶蔵」で、お気に入りの缶詰をゆっくりと開けて、大人の静寂に身を委ねてほしい。
  • 早朝6時、誰よりも早く起きて、部屋に流れ込んでくる熱海の深い青色に心を染めてみてほしい。