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コンビニ袋のガサガサ音が、一番心地よかった

コンビニ袋のガサガサ音が、一番心地よかった

真夜中の空腹に、誰が先に降伏するか

12月の別府は、空気が刺さるように冷たい。駅を出た瞬間、肺の奥まで凍りつくような感覚に襲われるが、同時に街の至る所から立ち昇る濃厚な硫黄の香りが、ここが温泉街であることを執拗に思い出させる。白く濁った湯煙が夜の闇に溶け込み、街全体が巨大な蒸し器に包まれているかのようだ。JR別府駅から御宿 野乃別府 / Dormy Inn Beppuまで歩くわずか1分の間、私たちは誰が一番先に「お腹が空いた」と白旗を上げるかという、どうでもいい賭けをしていた。冷え切った指先をコートのポケットに深く押し込み、互いに強がりを言い合う。しかし、ホテルのエントランスに入り、靴を脱いだ瞬間に足の裏へ伝わった床のしっとりとした温もりが、張り詰めていた緊張をふわりと解いた。チェックインを済ませ、部屋に入ったとき、私たちは互いの顔を見た。事前に立てた「大人の贅沢な別府プラン」を遂行する気なんて、もう誰一人として残っていなかった。結局、一番に折れたのは、最も強気に「地元の名店でディナーを」と主張していた友人だった。私たちは笑いながら、再び凍てつく外へ飛び出した。目的は駅前のコンビニ。最高級の和風空間に、プラスチック製の袋を大量に持ち込むという、心地よい背徳感を味わうためだけに。

畳の上で、ジャンクな本音を分かち合う

「ねえ、この畳の心地よさを台無しにしてまで、コンビニのカップ麺を食べるの、本当に正気?」

誰かが呆れたように言いながら、手際よくお湯を注いでいた。白い湯気がふわりと舞い上がり、洗練されたツインルームの空間に、安っぽい醤油の匂いが急速に充満していく。御宿 野乃別府 / Dormy Inn Beppuの静謐な和の意匠と、散乱した色鮮やかなコンビニ袋。そのあまりに不釣り合いな光景が、客観的に見れば滑稽だろうけれど、今の私たちにはそれが何よりも心地よかった。

「いいじゃん。完璧すぎる空間に身を置いていると、逆に息苦しくなるよ。こういう『隙』がないと、旅をしている実感が湧かないし」

「隙っていうか、ただの怠慢だよね。見てよ、このラインナップ。地元の銘菓を買い込もうって言ったのに、結局買ったのはポテトチップスと、正体不明の激辛練り物。私たちの計画性、絶望的に欠如してない?」

「いいんだよ。だって、別府まで来てわざわざ店を探して予約して、正装して食事をするなんて、今の私たちにはハードルが高すぎる。それより、この畳の上で足を伸ばして、誰にも邪魔されずにくだらない話をする方が、よっぽど贅沢だと思わない?」

「まあ、確かに。この間接照明の柔らかい光、絶妙に落ち着くし。あ、見て、このお菓子の袋を開ける音、意外といい音する。まるでASMRみたい」

「そういうところで感性を働かせないでよ」

私たちは、互いのセンスを軽く笑い合いながら、口いっぱいにジャンクフードを詰め込んだ。誰かが飲み物をこぼしそうになり、慌ててティッシュで拭き取る。そんな小さなパニックさえも、この夜の心地よいBGMになっていた。外の世界ではクリスマスやカウントダウンの喧騒が渦巻いているけれど、この部屋の中だけは、私たちだけの、どうしようもなく不完全で愛おしい時間が流れていた。

満たされた胃袋と、心地よい空白

食事が終わり、袋の山が片付けられた後の部屋には、不思議な静寂が訪れた。それは音が消えたというよりは、必要な音だけが濾過された感覚に近い。空調の低いハム音と、遠くで聞こえる街の微かな喧騒が、心地よいリバーブのように部屋の隅々にまで広がっている。お腹が満たされると、急に心地よい疲労感が波のように押し寄せてきた。私たちは誰からともなく、畳の上に大の字に寝転がった。天井を見上げながら、明日どこへ行くか、あるいはどこへも行かないかについて、とりとめもなく話し合う。結局、明日もゆっくり起きて、13階の天然温泉大浴場で時間を忘れて湯に浸かり、また適当に街を歩くだけでいいという結論に至った。

何もしないことを決める。それは大人の旅において最も勇気がいることであり、同時に最も贅沢な選択かもしれない。静謐な和の空間は、私たちのそんなわがままを、ただ静かに受け入れてくれていた。欠けている部分があるからこそ、そこに心地よさが入り込む余地がある。完璧に計画された旅よりも、こういう「失敗した夜」の方が、後で思い出したときに鮮やかな色をしている気がする。

裸足で踏んだ畳の温もりを指先でなぞりながら、深い眠りに落ちる。

  • 地元のコンビニで買える、大分限定の銘菓(見た目が地味なものほど味わい深い)
  • 深夜のカップ麺に添える、地元のスーパーで買ったちょっと良い漬物