← 戻る AMANE RESORT SEIKAI(潮騒の宿 晴海)

濡れたサンダルが鳴らす、小さなリズム

濡れたサンダルが鳴らす、小さなリズム

潮騒に溶け合う、家族の記憶の断片

濡れたサンダル:6月の別府は、空気そのものが水分を孕み、肌にまとわりつくような重さがある。潮騒の宿 晴海 / AMANE RESORT SEIKAIに足を踏み入れたとき、静寂に包まれた廊下に響いたのは「ぺたぺた」という湿った音だった。下の子が濡れたサンダルのまま駆け出したとき、フローリングに点々と残る水滴を「雨の地図だ」と笑った。その無邪気な言葉と、雨上がりの土の香りが混じり合った瞬間、旅の緊張がふっと緩むのを感じた。――一番下の子が最初に気づいた。

紫陽花の青:私たちが泊まった「空の棟」の早朝は、世界が深いコバルトブルーに浸っていた。海と空の境界が消え、自分が大きな水槽の中にいるような不思議な浮遊感。テラスに出て冷たい空気を吸い込むと、雨に打たれて重くなった紫陽花が、その青をさらに深めていた。上の子が「海の色と同じだね」と呟き、指先で触れた花びらはひんやりと冷たく、けれど生命力に満ちた弾力があった。――上の子が最初に気づいた。

湯気の中の沈黙:源泉掛け流しの露天風呂に身を委ねると、親としての役割や日常の緊張が、温かいお湯に溶け出す塩のようにゆっくりと消えていく。硫黄の香りがかすかに漂い、シルクのような湯触りが肌の表面から心の奥までじわりと熱を浸透させていく。隣で「お湯がしゅわしゅわしてる!」とはしゃぐ子の声が止み、家族四人が同時に黙った数秒間。ただ波の音だけが響く、心地よい共鳴の時間が流れた。――私が最初に気づいた。

迷子のホタル:夜の庭園に足を踏み出すと、湿った土と草いきれの香りが鼻をくすぐり、遠くで波が寄せては返す音がリズムを刻んでいた。ふいに目の前を横切った小さな金色の光に、下の子が「星が落ちてきた!」と叫んで飛び跳ねる。闇の中で明滅するその儚い光は、大人の凝り固まった心を静かに解きほぐし、忘れかけていた純粋な驚きを思い出させてくれた。――一番下の子が最初に気づいた。

大きすぎる浴衣:糊のきいた心地よい質感の浴衣。次男には袖が長すぎて、歩くたびにひらひらと舞う布の音が心地よい。それをマントのように羽織り、「ヒーローになる」と宣言して走り出す姿に、私たちはただ笑っていた。不格好に揺れる袖と、家族の弾けるような笑い声。その愛おしい光景こそが、この旅で一番の宝物になった気がする。――次男が最初に気づいた。

波の音に抱かれ、家族の呼吸が重なるまで、深い青の時間が静かに流れていた。

  • 6月の別府は雨が多いため、予備の靴下を多めに。温かい部屋で履き替える瞬間は、至福のひとときです。
  • お食事処では地元の旬を。子供たちが料理の色彩や形に心を躍らせる時間を、大人がゆったりと見守ってください。