← 戻る 博多エクセルホテル東急

冷たいタイルの上で、スーツケースが鳴らした不協和音

冷たいタイルの上で、スーツケースが鳴らした不協和音

桜の裏切りと、賑やかな絶望

「ねえ、見てよ。一本も咲いてない。全部ただの緑色の棒じゃん!」
誰かが呆れたように叫ぶ。中洲川端駅の出口、冷たい三月の風が頬を刺し、どこからか漂う屋台の出汁の香りが鼻をくすぐる中、私たちはスマホの画面と絶望的に静かな街路樹を交互に見ていた。
「開花予想では今日からだって書いてあったのに!信じられない!」
「そのアプリ、更新日いつだよ。もしかして去年じゃないの?」
「うるさいな!信じた私が馬鹿だったよ。もう全部あんたのせい!」
「え、なんで俺に飛ぶわけ?計画立てたの誰だっけ」
互いに責任をなすりつけ合いながら、私たちは肩を揺らして笑った。期待していたピンク色の景色はどこにもない。けれど、その空虚な期待感が、かえって私たちを饒舌にさせた。

中洲の喧騒を脱ぎ捨てる、温もりの余白

博多エクセルホテル東急のロビーに足を踏み入れた瞬間、外の喧騒が厚いガラスに遮られ、まるで深い海の底に潜ったかのような静寂に包まれた。ひんやりとした空気が肌をなで、張り詰めていた気持ちがふっと緩む。チェックインを済ませ、エレベーターが静かに上昇するたびに、日常の雑音が遠ざかっていく感覚があった。

案内されたスタンダードツインのドアを開けると、そこには現代的な機能美と、温かみのある色調が調和した心地よい空間が広がっていた。モダンな直線的なデザインでありながら、照明の暖色系が空間を包み込み、まるで親しい誰かの家に招かれたような錯覚に陥る。足を踏み出すたびに、厚手のカーペットがわずかに沈み込み、私たちの騒がしい足音を優しく飲み込んでいく。窓から差し込む午後の光は、白いシーツの上でプリズムのように屈折し、小さな虹色の筋を描いていた。その光の粒子が、部屋に漂う清潔なリネンの香りと混ざり合い、心地よい倦怠感を誘う。

中洲川端駅まで歩いてわずか1分という立地は、便利さ以上に「いつでも戻れる場所がある」という絶対的な安心感を与えてくれる。ホテル内のレストランで味わった明太子の鋭い塩気と、炊き立てのご飯の甘い香りがまだ記憶に鮮やかだ。あの一口で、旅の緊張が快感に変わった。この静かな部屋で、私たちは不完全な計画を練り直す贅沢に浸っていた。ふと誰かがコンビニで買ってきた酸っぱいグミを分け合い、顔をしかめながら笑い合う。そんな、何の意味もないけれど代わりのきかない時間が、部屋の柔らかな光に溶け込んでいた。

午前三時、嘘のない呼吸

「なあ、10年後もこうやって喧嘩しながら旅してるかな」
部屋の明かりをすべて消し、カーテンの隙間から中洲の街灯が細い線となって差し込む中、隣で誰かがぽつりと呟いた。昼間の賑やかさが嘘のように、声のトーンが低く、深く沈み込む。
「さあね。たぶん、誰かが結婚して、誰かが仕事に追われて、こうやって集まるのは至難の業になるんじゃない?」
「……そういうこと言うなよ。急に寂しくなるだろ」
「あはは、ごめん。でも、今こうして一緒にいられるのは、きっと正解だったと思う」
「まあな。桜がなかったのは最悪だったけど、結果的にこの部屋でダラダラしてたのが一番の正解だった気がするよ」

暗闇の中で、お互いの静かな呼吸だけが重なり合う。私たちは、失いたくない時間を必死に繋ぎ止めようとするように、あえてとりとめもない話を続けた。言葉にしなくても伝わる、ある種の信頼感。それは完璧な計画や美しい景色よりも、ずっと重みのあるものだった。窓の外では、眠らない街の灯りが宝石のように瞬き、私たちの密やかな時間を静かに見守っていた。

遠くで鳴る車の走行音が、心地よい子守唄のように夜の静寂に溶けていった。

  • 中洲川端駅徒歩1分の好立地を活かし、あえて目的地を決めずに夜の街を彷徨ってみてほしい。
  • 温かみのある色調の客室で、デジタルデトックスをして友人との対話に没頭する時間を。