← 戻る BUNSHODO HOTEL

ページをめくる音と、隣で寝息を立てる小さな手

ページをめくる音と、隣で寝息を立てる小さな手

記憶のページをめくる、五つの音色

パタパタと廊下を駆ける、小さな足音。長男がBUNSHODO HOTELのロビーを冒険し始めたとき、この旅の主導権は彼に移った。指先に触れる古書のざらついた質感と、静寂に溶け込む子供の活気。それは、計画通りにいかない旅だけが奏でる、心地よい不協和音のようで、私の心をふわりと軽くしてくれた。

ドサッ、と重いハードカバーが閉じる音。読書に耽っていたパパが、次男の「この本の中には誰が住んでいるの?」という純粋な問いに、苦笑いしながら本を置いた瞬間だ。埃が舞う午後の柔らかな光の中で、大人の静寂よりも子供の好奇心の方がずっと質量を持っていることに気づかされる。インクと古い紙の香りが、家族の穏やかな時間を優しく包み込んでいた。

ジャーーという激しい水の音と、それに混じって弾ける高い笑い声。FOUR BED ROOMで賑やかに過ごした後、共用シャワー室で次男がわざと水を跳ね上げている。個別のバスルームがない不便さは、いつしか「家族全員で挑む作戦」のような連帯感に変わっていた。濡れたタイルのひんやりとした感触と、肌を包む湯気の温もりが交互にやってくる、少しだけ騒がしい家族の儀式。

カサカサと、窓の外で桜の花びらがガラスに触れるかすかな音。博多駅から歩いてわずか5分の道のりで、私たちは春の風に追いかけられてきた。外の喧騒を遮断した静謐な空間の中で、その小さな音だけが、いま私たちが福岡の4月にいることを静かに教えてくれる。淡いピンク色の破片が、夜の闇に溶け込むように舞い落ちる光景に、胸が締め付けられるような愛おしさを感じた。

クスクスという、秘密を共有するような低い笑い声。ラウンジの隅で、子供たちが不思議な挿絵の本を見つけたときの音だ。大人が見落としていたページに、彼らは自分たちだけの宝物を見つける。その発見の瞬間の震えるような喜びは、どんなに高価な音楽よりも鮮明に私の心に届き、親子の絆をより深く、確かなものにしてくれた。

古本の香りと、眠った子供の額のぬくもりだけが残った、静かな夜。

  • ラウンジの膨大な蔵書の中から、子供と一緒に「世界で一番不思議な絵」が載っている一冊を探してみてほしい。
  • 博多駅からの短い散歩道で、風に舞う桜の花びらをいくつ拾えるか、子供たちと競い合ってみるのもいい。