← 戻る 下呂温泉山形屋

湯煙りの向こうで誰かが手を振っていた

湯煙りの向こうで誰かが手を振っていた

荷物と足音が一階に降り注いだとき

午後三時半、下呂駅からの送迎バスが到着した。四人分のスーツケースがロビーのタイルに転がる音は、まるで誰かが「始まったぞ!」と合図を出しているみたいだった。荷物を整理していたら、呂尚館 温泉内風呂付和洋室の鍵を握りしめた手が震えていた。中には「忘れ物ない?」の声が飛び交い、誰かが「絶対忘れるやつがいると思ってた」と呟く。ロビーのソファに座って荷物を整理していたら、壁にかかっていた掛け軸の隙間から、飛騨川鉄橋の鉄骨が夕闇に浮かぶシルエットが見えた。鉄骨はまるで「ようこそ」と首を傾げているみたいで、外の冷たい空気が肌を刺す中、ロビーの暖房がじんわりと足元を包んでいた。

このホテルが教えてくれた4つのこと

【「露天風呂の湯気が、外の寒さを全部持って帰っていく」】
天然温泉・展望半露天付客室 角部屋「有明」の湯船に浸かって外を見ていたら、湯気が窓ガラスを曇らせた。曇りガラス越しに、飛騨川の向こうにあるイルミネーションがちらちらと揺らめく。湯気が晴れるたびに、光が少しずつ現れるのが面白かった。友達が「これ、外の景色じゃなくて、温泉の景色みたい」と呟いた。確かに、湯気が作る不思議な光のカーテンは、景色というよりも「温泉が見せるショー」のように感じられた。硫黄の香りが鼻をくすぐり、体の奥まで染みるぬくもりが時間を解きほぐしていった。

【「ロビーのソファは、文句をすべて飲み込んでくれる」】
「このソファ、沈みすぎだろ」と文句を言ったら、ソファが「うん、そうだよ、全部吸うよ」と言わんばかりに体が沈み込んだ。隣で友達が「ソファのせいにしてるだけじゃない?」と笑った。でも、その沈み込みが、結局「疲れてるんだな」ということを教えてくれた。ロビーでコーヒーを飲みながら、誰もが「今日はいつもより寝たい」という顔をしていた。ソファのクッションが体の重みを優しく受け止め、ロビーの静かなBGMが心地よい疲労を包み込んでいた。

【「露天風呂の風呂桶が、時間を変える」】
呂尚館の露天風呂に浸かっていると、時間の流れがゆっくりになった。温泉のぬくもりが体の奥まで染みて、外の風が「寒い寒い」と叫んでいるのが、逆に面白かった。友達が「これ、タイムスリップしてるみたい」と言った。確かに、温泉の湯気が周りの音を吸い込んで、耳元で「静かにして」と囁いているみたいだった。湯船の底の小石が足の裏を優しく押し上げ、硫黄の香りが漂う中、時間が溶けていく感覚があった。

【「食事が終わったら、部屋の照明が優しくなる」】
夕食の会席で飛騨牛を食べたあと、部屋に戻ったら照明が少し暗くなっていた。暗くなってから気づいたけど、部屋の明かりは「今日はもう寝よう」という合図みたいだった。友達が「これ、ホテルの優しさだね」と言って、ベッドにダイブした。ベッドのマットレスが体を包み込み、外の寒さが窓ガラスを震わせる中、部屋の暖かさが安らぎを与えてくれた。

リストになかった、最高の瞬間

大晦日のカウントダウンは、下呂温泉山形屋のすぐ近くで行われていた。十二月三十一日の夜、ホテルのロビーで新年のカウントダウンを待っていると、外から歓声が聞こえてきた。ロビーの窓から覗くと、下呂のイルミネーションが川沿いに輝き、花火が上がっていた。友達が「これ、外に出よう」と言って、ホテルを飛び出したら、外は思ったよりも寒くて、でも誰もが笑顔でカップルや家族連れで賑わっていた。温泉の湯気が、友達の笑顔を包んでいた。

温泉の湯気が、友達の笑顔を包んでいた

  • 下呂温泉山形屋の露天風呂付き客室は、年末の静けさを運んでくる。
  • 十二月の下呂は寒いので、温泉セットと防寒グッズは必須。