← 戻る グランピングステイトマム GLAMPING STAY TOMAMU

深夜二時に、誰かがポテトチップスを開けた音

深夜二時に、誰かがポテトチップスを開けた音

午前二時の静寂を切り裂いた、食欲という名の誘惑

十一月のトマムの夜は、空気が鋭い。鼻の奥がツンとするような冷たさが、肺の深くまで入り込み、意識を強制的に覚醒させる。グランピングステイトマム GLAMPING STAY TOMAMUのドームテントに身を寄せていると、外界の喧騒が完全に消え去り、まるで地球にぽつんと取り残された白い泡の中に閉じ込められたような、不思議な心地になる。もともと私たちは「今回は絶対に贅沢をして、大人の洗練された旅をしよう」と意気込んでいた。しかし、そんな気取った計画は、深夜二時に誰かが漏らした「お腹空いた」という、あまりにも本能的な一言であっけなく崩壊した。犯人は、昼間に北海道産和牛のバーベキューを誰よりも貪り食っていたはずの友人だ。信じられないことだが、食欲というものは、北海道の凍てつく寒さと深夜の深い静寂が組み合わさると、異常な方向へと加速するらしい。私たちは厚手のコートを無理やり羽織り、足元をガサガサと鳴らしながら、管理棟のロッジ・アスペンの方へ、あるいは各自の荷物の中へと、禁断の食料探索に繰り出した。靴下を履いたまま冷たい床を踏むときの、あのひやりとした感触。それがスイッチとなり、急に全員のテンションが跳ね上がったのがわかった。

砕けるチップスの音と、心地よい不協和音

「ねえ、そもそも誰がこの量のポテトチップスを買うって決めたの?」

袋が開いた瞬間、パリッという乾いた音がドームの天井に反響し、心地よく耳に届いた。ドームテントの中は音が不思議な回り方をする。誰かが笑えば、その振動が白い壁を伝って、自分の体温にまで浸透してくるような感覚だ。

「いいじゃん、あったほうが。っていうか、お前がさっき『全部食べる』って言ったよね?」
「言ってない!『美味しそう』って言っただけ!」

そんな、明日になれば誰も覚えていないようなくだらない言い争いが、深夜の空間を温かく埋めていく。私たちは、シングルベッドが並んだトレーラーハウスのパークボックスにいた仲間とも合流し、狭いスペースに身を寄せ合って、コンビニで買い込んだ地元の濃厚なチーズと、温かいスープの缶を囲んだ。立ち上る白い湯気が、冷えた鼻先を優しくかすめていく。もしかすると、私たちはこの旅で一番「私たちらしい」時間を、この不健康で贅沢な深夜の軽食タイムに過ごしていたのかもしれない。

誰かが、わざとらしく「あー、明日からのスケジュール、全部キャンセルしてここで寝てたい」なんて言い出した。それに対して「お前、さっきまで『明日の朝は絶対早起きして雲海を見る』って意気込んでたじゃん」という鋭いツッコミが入る。そのやり取りを聞きながら、私は口の中にあるチーズの濃厚な塩気と、外の凍てつくような静寂との鮮やかなコントラストを味わっていた。ふと、誰かが袋を開けようとして力を入れすぎたせいで、チップスが天井まで舞い上がったことがあった。その瞬間、全員が同時に絶句し、それから耐えきれずに爆笑した。あの、不意に訪れた静寂と爆笑の切り替わりこそが、旅の醍醐味というものなのだろう。

満たされた胃袋と、降りてきた心地よい空白

食べ終えた後の袋が、しわくちゃになって床に転がっている。激しかった会話の速度が、少しずつ、緩やかに落ちていった。誰かが深い欠伸をし、誰かが静かに毛布の海へと潜り込む。ドームの白い天井を見上げると、外の風が布地を揺らしているのがわかった。ゴォーという低い音が、まるで巨大な生き物が深い眠りの中で呼吸しているように聞こえる。さっきまでの騒がしさが嘘のように、空間に心地よい空白が広がっていく。私たちは、もう言葉を交わす必要なんてなかった。ただ、隣に誰かがいて、同じ温度の空気を吸っている。その事実だけで十分だったという気がする。

十一月のトマムという場所は、人を孤独にするのではなく、むしろ「一緒にいること」の輪郭をはっきりさせてくれる。冷たい外気があるからこそ、この小さな空間の温もりが、皮膚を通してじわりと伝わってくる。もしかすると、私たちは何か特別な景色を探しにここへ来たのではなく、ただこの「心地よい空白」を共有したかっただけなのかもしれない。意識が遠のく直前、誰かが小さく「また来なきゃな」と呟いた。それに答える人はもういなかったけれど、その言葉は静かに、テントの白い闇の中に溶けていった。

頬に触れる毛布の温度が、ちょうど心地よかった。

  • 濃厚な北海道産カマンベールチーズと、温めたりんごジュースの組み合わせ
  • 地元コンビニでしか売っていない、少し甘めの北海道限定ポテトチップス