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ミトンの中で、小さな手が握りしめていたもの

ミトンの中で、小さな手が握りしめていたもの

凍てつく空気と、温かな混沌の始まり

肺の奥まで突き刺さるような鋭い冷気が、鼻先をツンとさせる。外はマイナス1度。白く濁った吐息を吐きながら、Hotel Resort Trinity Sapporoの入り口に足を踏み入れた瞬間、世界の色が変わった。濡れたウールのコートから立ち上がる独特の湿った匂いと、ロビーに漂う柔らかなアロマの香りが混ざり合い、強張っていた身体がふわりと解けていく。けれど、そこからが本当の「戦い」の始まりだった。

長男は自分の小さなキャリーケースを運ぶことに異常なまでの執着を見せ、次男は厚手のダウンジャケットに包まれて、まるで小さなペンギンのように左右に揺れながら歩く。チェックインの手続きをしている間も、彼らは一秒たりともじっとしていられない。ロビーの暖色系の照明の下、子供たちが走り回る軽やかな靴音が心地よく響き渡る。荷物が散らばり、大人の余裕なんて雪の中に置き忘れてきたけれど、その乱雑さこそが旅が始まった合図だった。完璧なスケジュールなんて、この雪の街には似合わない。ただ、この温かい空間に家族全員が揃ったという事実だけが、今のところ一番確かな幸福だった。

予定外のプリズムと、小さな冒険者たち

靴を脱いで上がるスタイルに、子供たちはまるで秘密基地に潜入したかのような高揚した表情を浮かべていた。案内されたパークサイドダブルの部屋に入った瞬間、長男が真っ先に駆け寄ったのは大きな窓辺だった。12月の札幌の街並みが、冷え切ったガラス越しに広がっている。外はもう薄暗いけれど、街の明かりがガラスに付着した微細な霜に当たり、プリズムのように色が分かれて見えた。赤、青、黄色。光が屈折して、現実よりも少しだけ幻想的な景色がそこにあった。「見て!虹が出てるよ!」とはしゃぐ声が、静かな部屋に響く。

翌朝の朝食ビュッフェでは、管理栄養士監修の「Eatwell Breakfast」に子供たちが興味津々だった。色とりどりの新鮮な食材が並ぶ様子に、次男が「ここ、おもちゃ箱みたい!」と歓声を上げる。彼は、お皿に盛ったカットフルーツの一片を、どうにかして鼻の上にバランスよく乗せようと格闘していた。その滑稽で、けれど至極真剣な横顔を見て、私たちは同時に吹き出した。そんな誰にも記録されない、名もなき瞬間こそが、旅の本当のハイライトになる。北海道の新鮮な牛乳の、濃厚でありながら澄み切った味が、まだ眠っていた身体をゆっくりと覚醒させてくれる。

予定していた観光地を回るよりも、ホテルの廊下にある不思議な質感の壁を指先でなぞったり、大浴場の白い湯気の中で誰が一番長く潜れるか競い合ったりすることに、彼らは夢中だった。温かいお湯に浸かり、肌がじんわりと赤く染まる感覚。湯上がりに浴びる冷たい空気の心地よさ。子供たちの好奇心というフィルターを通すと、ホテルという空間さえも、終わりのない冒険の舞台に変わるのだ。

静寂という名の贅沢と、夜の呼吸

子供たちが深い眠りに落ちた後、部屋にはようやく、濃密な静寂が訪れる。ホテルリソルトリニティ札幌が誇るオリジナルベッドのシーツは、肌に触れるとさらりと心地よく、一日中歩き回った身体の重みをすべて優しく受け止めてくれる。隣で規則正しく聞こえる子供たちの寝息。それは、どんなに精巧なサウンドデザインよりも心を落ち着かせる、世界で一番安心できる周波数だった。

私たちは、消し忘れた間接照明の淡い光の中で、冷えたグラスに飲み物を注いだ。カランと氷が鳴る音が、静まり返った部屋に心地よく響く。窓の外では、札幌の夜景が静かに呼吸していた。ガラスに反射する光は、まるで誰かが描いた水彩画のように滲み、夜の闇に溶け込んでいる。昼間の喧騒が嘘のように、今はただ、この部屋という小さな容器の中に、私たち家族の体温だけが閉じ込められている。

「本当に疲れたね」

そう言い合ったけれど、その言葉には疲れ以上の、深い充足感が混じっていた。大浴場で芯まで温まり、血行が良くなった身体が、心地よい倦怠感に包まれている。完璧にコントロールできない子供たちとの旅は、正直に言ってハードだ。けれど、その制御不能な部分があるからこそ、ふとした瞬間に訪れるこの静寂が、何よりも贅沢なご褒美に感じる。光が屈折して色を変えるように、家族という関係も、旅というフィルターを通すことで、普段は見えない色を見せてくれるのかもしれない。私たちはただ、その光の揺らぎを、いつまでも眺めていた。

冬の温度を抱いて、日常へ戻る道

チェックアウトの朝、子供たちは不思議なほど素直に、でも名残惜しそうに部屋を見渡していた。長男は窓辺のプリズムのような光をもう一度見たがっていたし、次男はベッドの柔らかさが忘れられないと、シーツに頬を寄せていた。

外に出ると、再びあの鋭い冬の空気が私たちを待ち構えていた。けれど、心の中には、ホテルで過ごした時間の温もりが、薄い膜のように私たちを包み込んでくれている気がした。荷物は来る時よりも増えていたし、服はどこか汚れていたけれど、胸の奥には、名前のつかない心地よい塊が残っていた。

旅が終わるということは、日常に戻るということだ。けれど、日常に戻った後も、ふとした瞬間にこの冬の温度を思い出すだろう。ミトンの中で子供たちがぎゅっと握りしめていた、あの小さな喜び。不完全で、混乱していて、だからこそ愛おしい時間の断片。私たちは、またいつかこの光の屈折に会いに、この街に戻ってくるはずだ。

  • 大通公園まで徒歩0分なので、子供が飽きる前に外のイルミネーションを覗きに行き、すぐに暖かい部屋に戻ってきて休むという「短距離往復作戦」がおすすめです。
  • 朝食のビュッフェでは、栄養バランスのアイコンを子供と一緒にチェックしながら、「今日はどの色を食べるか」というゲーム感覚でメニューを選ぶと、野菜も楽しく食べてくれるかもしれません。