JR札幌駅からホテルまで歩くわずか3分の間、肺の奥まで凍りつくような冷気が入り込んでくる。雪を踏みしめるキュッキュという乾いた音だけが響き、頬を刺す風の感触は、まるで目に見えない薄いガラスの破片を纏っているみたいだった。「本当にこの寒さで大丈夫か?」という不安がよぎった瞬間、京王プレリアホテル札幌の重い扉を開けた。すると、外の世界とは切り離された、包み込むような温かい空気が肌を優しく撫でる。その劇的な温度差に、私たちは同時に深く、長い息を吐き出した。信じられないと思うけれど、その瞬間の圧倒的な安堵感だけで、この旅の半分は正解だったと確信できた。
私たちの「迷走」を静かに見守っていた5つのもの
プラスチックのルームキー: 指先に伝わる滑らかで硬質な質感。深夜、コンビニで買い込んだ大量のお菓子をベッドの上に散乱させ、「誰が一番、旅に不要なものを持ってきたか」という不毛極まりない議論を繰り広げていた時間を、この小さなカードは冷徹に、けれど温かく記憶しているはずだ。
白いバスローブ: 触れると吸い込まれそうな、雲のような柔らかさ。大浴場から戻ってきた後の、心身ともに完全に脱力した状態の私たち。「誰が先に寝落ちするか」というくだらない賭けに負けて、ローブを着たまま床に転がっていたあの情けない姿を、この真っ白な布地はすべて吸い込んでしまったのかもしれない。
朝食の盛り付けプレート: 北海道の生産者のこだわりが詰まった、宝石のように色鮮やかな食材たち。芳醇なバターの香りに包まれながら、誰が一番贅沢に盛り付けられるか競い合った結果、全員がお腹いっぱいで動けなくなり、チェックアウトの時間に焦って走ったあの騒がしい朝の証人だ。
ラウンジの深いソファ: 体がゆっくりと沈み込む、心地よい抱擁感。琥珀色の柔らかな照明の下で、地図を広げて「次はここに行こう」と計画を立てていたけれど、結局誰一人として地図を見ていなかった。ただ、とりとめもない会話に花を咲かせていた、あの緩やかな時間をこのソファは静かに支えていた。
窓際のベンチシート: 外は一面の白銀の世界。冷たいガラスに額を押し当てて、遠くの山並みを眺めていた静寂の時間。外の氷点下の世界と、室内のぬくもりの境界線。結露したガラスに誰かが指で変な落書きをした、あのくだらない瞬間の温度を、このシートは覚えている気がする。
もし、この部屋が口をきけたとしたら
きっと彼らは、私たちのことを「ゲスト」ではなく、「小さな温かい嵐」と呼ぶだろう。京王プレリアホテル札幌のロビーや廊下に漂う、洗練された静寂やデジタルツールの効率的なリズム。そこに、私たちの不協和音のような笑い声や、足並みの揃わない不器用な歩調が混ざり合う。それは、完璧に調律された楽器の中に、わざと少しだけ音を外したノートを混ぜるような心地よさだった。効率的に設計された現代的な空間だからこそ、私たちの計画性のない振る舞いが、かえって鮮やかな色彩を持って浮かび上がった気がする。誰かがローブの裾を踏んでよろけた瞬間、全員で同時に吹き出したあの空気感。そういう、計算されていない空白の時間こそが、この旅の正体だったのかもしれない。
結露した窓ガラスを指で拭ったとき、そこに見えたのは、冬の札幌に溶け出した私たちの笑い声だった。
- 札幌駅からのアクセスが抜群なので、重い荷物を持って歩く時間を最小限にし、その分街歩きに時間を割くのが正解。
- 大浴場でのんびりした後、宿泊者専用ラウンジで温かい飲み物を飲みながら、旅の「失敗談」を語り合う時間をぜひ。