← 戻る 帯広リゾートホテル

子供の寝息が、部屋の隅に溜まっていく時間

子供の寝息が、部屋の隅に溜まっていく時間

07:30、い草の香りと家族の不協和音

指先に触れる畳の少しざらついた感触と、鼻腔をくすぐるい草の清々しい香りで目が覚めた。帯広リゾートホテルの和室は、外の静寂をそのまま室内に招き入れたかのように穏やかで、けれど同時に、家族それぞれの体温を柔らかく吸収してくれる包容力がある。隣では、上の子がまだ夢の中で何かを熱心に主張しており、下の子はすでに目を覚まして、障子の隙間から差し込む淡い朝光を追いかけて畳の上を転がっていた。

「ねえ、お湯はなんで茶色いの?」

下の子の唐突な問いかけに、私たちは一瞬答えに詰まった。植物が長い年月をかけて分解され、大地の記憶を蓄えてできたものだという難しい説明よりも、今はただ、この賑やかさを楽しみたい。子供たちの足音が畳の上で不規則なリズムを刻み、それが部屋の隅々にまで心地よく響き渡る。それはまるで、調律されていない楽器たちが同時に鳴り響いているような、愛おしい不協和音だ。誰かが靴下を片方失くし、誰かがジャムをテーブルにこぼす。そんな、計画通りにいかない朝の混沌こそが、旅が本格的に始まったことを告げる合図のように感じられた。

14:00、琥珀色の濃密な抱擁に溶ける

白樺並木をゆっくりと歩いた後の肌は、心地よく火照っていた。十勝の空気はさらりと乾いていて、風が吹くたびに白い幹の間を通り抜けるサササという囁きのような音が耳に届く。そのまま帯広リゾートホテルの自慢であるモール温泉へと向かった。脱衣所で衣服を脱ぎ、ゆっくりと湯船に足を入れた瞬間、その温度と独特の質感に、張り詰めていた肩の力がふっと抜けていくのがわかった。

お湯は、深く、濃い琥珀色をしている。それは単なる色彩ではなく、ある種の心地よい重みを伴っていた。肌に触れると、まるで温かいシルクの布に包まれているような、あるいは濃厚な紅茶に浸かっているような、独特のとろみがある。下の子は最初、その不思議な色に驚いて私の裾をぎゅっと掴んでいたけれど、やがて自分から潜り込み、「お湯がくっついてくる!」とはしゃぎ始めた。大人の私たちは、ただ静かに湯船の縁に頭を預け、天井を見上げる。子供たちが上げる水しぶきの音さえも、この濃密な湯の中では柔らかく吸収され、心地よい低周波のように体に伝わってくる。日常の喧騒で尖っていた神経が、琥珀色の温度に溶かされ、ゆっくりとほどけていく。完璧な静寂ではないけれど、この雑多な心地よさが、今の私たちには何よりの贅沢だった。

19:00、透明なドームに満ちる笑い声

夕暮れ時、私たちはグランピングのドームへと移動した。透明な壁の向こう側には、北海道のどこまでも広い空が、深い藍色に染まりながら広がっている。BBQの火がパチパチと爆ぜる乾いた音と、肉が焼ける香ばしい匂いが、白樺の森の冷たい夜気と混ざり合い、食欲を激しく刺激する。

「パパ、見て!お星さまが降りてきたよ!」

上の子が指差した先には、薄暗い空に宝石を散りばめたように点在する星々があった。子供たちはドームの中を自由に走り回り、浴衣の裾を翻しては、弾けるような笑い声を上げる。その声はドームの曲線に沿って反射し、心地よいリバーブとなって空間を満たしていた。普段なら「家の中では走り回らないで」と注意するところだけれど、ここではその奔放ささえも、この雄大な風景の一部になる。焼き上がった地元の野菜を口に運ぶと、大地の力強い味が濃く、驚くほど甘い。特別な料理ではないけれど、外で食べるというだけで、すべてが至高のご馳走に変わる。口の周りをソースで汚しながら夢中で食べる子供たちの姿を眺めていると、胸の奥に温かいものが溜まっていく。誰かが笑い、誰かが言い争い、そしてまた笑い出す。そんな不規則な旋律こそが、この場所で聴ける最高に贅沢なBGMだった。

23:00、静寂という名の深い休息

子供たちが深い眠りに落ち、部屋にはようやく大人の時間だけが静かに残った。彼らの規則正しい寝息が、部屋の隅に柔らかく積み重なっている。その静けさは、昼間の喧騒が残した心地よい余韻のようだった。私たちは、夜の静寂に誘われるようにバレルサウナへと足を向けた。円形の天井から漏れる夜空の星を眺めながら、熱い蒸気に身を任せる。じわりと汗が流れ出し、体の中の不要な澱みがすべて排出されていく感覚。サウナを出て、冷たい夜風に当たった瞬間、肌がピリリと震え、意識が鮮明に研ぎ澄まされた。

「疲れたね」

パートナーが小さく呟く。その言葉には、単なる疲労ではなく、心まで満たされた充足感が混ざっていた。旅はいつも、思った通りにはいかない。子供の機嫌に振り回され、予定は大幅に遅れ、心身ともに消耗する。けれど、その心地よい疲労感こそが、家族として濃密な時間を共有したという確かな証拠なのだと思う。ベッドに戻り、もこもことしたリネンの感触に包まれる。明日になればまた、賑やかな朝がやってくる。けれど今は、この静かな残響の中に身を置いていたい。帯広の夜は深く、そしてどこまでも優しい。

子供の小さな手のひらが、私の指に触れたまま眠っている。

  • モール温泉の後は、ぜひ館内のコミックコーナーで休息を。子供たちが本に夢中な間に、大人は至福の静寂を独占できます。
  • グランピングBBQには、道の駅おとふけで買った新鮮な地場野菜を添えて。十勝の大地の味が、旅の記憶をより鮮明にします。