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吐き出した息が、白く重なって消えた場所

吐き出した息が、白く重なって消えた場所

5年後の私たちへ。あの時、誰が一番先に「寒い」って泣き言を言ったっけ。帯広の3月、まだ冬が居座っていたあの凛とした空気感を、今の君は覚えているかな。あの凍える寒さがあったからこそ、私たちはあんなに密着して笑い合えたんだと思う。

5年後もきっと、指先が覚えていてくれる4つのこと

琥珀色の湯に溶けた、くだらない賭け
帯広リゾートホテルのモール温泉に浸かったとき、濃い茶色のお湯がまるで液体になった太古の森のように見えた。植物性の有機物が溶け込んだしっとりとした濃厚な質感に、「誰の肌が一番つるつるになるか」という子供のような賭けに興じたよね。お風呂上がりの廊下で、ぬるぬるした肌の感触に笑い転げながら、誰が一番滑りそうか競い合っていたあの時間。森の香りが混ざり合った温もりが、今も心地よい記憶として肌に刻まれている。

プラスチックの天窓に屈折する、名前のない星
グランピングのドーム型テントで、冷えた空気の中で厚い毛布にくるまり天井を見上げた夜。透明な素材を通した星の光が微妙に歪み、まるで深い水底から夜空を仰いでいるような錯覚に陥った。「あれはきっと、宇宙のバグだよ」と誰かが囁いた、正解のない星の名付け遊び。不完全な光の屈折と、隣で聞こえる静かな呼吸音、そしてテント内に漂うかすかなアロマの香りが、あの夜の正体だった。静寂さえも心地よい、二人だけの秘密基地のような時間だった。

白樺の白に目が眩んだ、静かな午後
白樺並木に足を踏み入れた瞬間、空の灰色と木の白の強烈なコントラストに、視界の端がじわっと滲んだ。半分溶けた雪を踏みしめるたびに「ギュッ、シャリ」と鳴る、心地よくも冷たい音。頬を打つ冷たい風に身をすくめながら、桜の開花予想をスマホで確認し、「まだ全然無理だね」と笑い合ったあの空気の冷たさと、鼻腔をくすぐる冬の終わりの澄んだ香りが、今の私にはたまらなく懐かしい。

バレルサウナの熱気と、突き刺さる外気
樽のようなサウナの中で、ロウリュの白い蒸気が視界を塗りつぶし、肌を刺すような熱気に包まれた。透明な天井越しに外の凍てつく景色を眺めるという、滑稽で贅沢な矛盾。サウナを出て冷たい空気に身を晒した瞬間、肺の奥まで凍りつくような衝撃が走り、その後の体温の上昇に、私たちはただ黙って身を任せていた。あの極限の温度差がもたらす深い充足感こそが、生きている実感を私たちに刻み込んだ。

5年後の封印を解いたとき

あの旅で一番記憶に残っているのは、おそらく景色よりも「境界線が曖昧になった感覚」だと思う。温泉の湯気で視界がぼやけ、ドームの壁で外の世界と切り離され、でも隣にいる君たちの体温だけははっきりと伝わってくる。3月の帯広は、すべてが淡い色に塗りつぶされていた。ひな祭りの飾りを見た地元の店や、春分を待つ街の静けさ。そんな光の粒子が重なり合い、私たちは一つの心地よい塊になっていた。その曖昧な時間こそが、人生で一番贅沢な空白だったのだと、今の私は確信している。

冷えた指先で、温かいコーヒーカップを囲んでいたあの午後の光景。

  • 3月の帯広は想像以上に冷えるから、厚手の靴下を3足は持っていくこと。
  • 柳月スイートピアガーデンで、焼きたてのあんバタサンを頬張る時間を必ず作って。