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午前2時のプリンは、誰のせいでもなかった

午前2時のプリンは、誰のせいでもなかった

真夜中、空腹に屈した者たちの密約

足の裏に触れる畳のざらりとした感触が、昼間の日差しをかすかに記憶していた。帯広リゾートホテルの和室は、外の冷え込みを完全に遮断しているはずなのに、どこか隙間から忍び込む十月の夜風が、時折、肌をちくりと刺す。そんな温度差があるとき、人はどうしてか、普段よりも正直に「お腹が空いた」と言いたくなるのかもしれない。もともと私たちは、今回の旅の計画を立てるときに、あえて詳細を決めなかった。誰がいつ、どのタイミングで空腹に屈するかを賭けるという、大人の遊びにしてはあまりにくだらないルールを設けていたからだ。結果的に、一番に声を上げたのは、旅の間ずっと強気な態度を崩さなかった友人だった。私たちは、半分は呆れながら、もう半分は待っていた快感に浸りながら、夜の街へ繰り出した。コンビニへと向かう道すがら、ビニール袋が風に煽られてガサガサと鳴る音が、静まり返った十勝の夜に妙に大きく響いていた。手に持った温かい飲み物のカップから伝わる熱が、凍えた指先からゆっくりと体温を上げていく。その心地よい熱量こそが、今の私たちの、遠慮のない距離感に似ている気がした。

泡立つサイダーと、琥珀色の記憶

「ねえ、あの温泉、本当に茶色かったよね。あれ、どういう仕組みなの?」

畳の上に広げたコンビニのお菓子と、地元で買った色とりどりのスイーツ。サイダーの泡がパチパチと弾ける軽快な音と一緒に、誰かがふと切り出した。帯広リゾートホテルのモール温泉のことだ。私たちは、その濃厚な茶褐色の湯に浸かったときの、あの不思議な感覚を言葉で共有しようとしていた。

「なんか、お湯っていうより、温かい蜂蜜に包まれているみたいだった。肌がもったりして、吸い付くっていうか。森の記憶が溶け出したみたいな色だったよね」

「わかる。でも、最初はちょっとびっくりしたよね。あんな色のお湯に入るなんて、人生で初めてだったし」

そう言いながら、一人が誇らしげにプリンの蓋を開けようとした。その瞬間、不器用な手の動きのせいで、プリンの半分が容器の縁から飛び出し、真っ白なTシャツにぽつんと着地した。一瞬の静寂。それから、誰からともなく吹き出した。笑いすぎて、誰かがサイダーを吹き出し、部屋の中は一気にカオスな状態になる。結局、その汚れを落とすために、また洗面所まで走ることになったけれど、そんな無駄な時間こそが、旅における最高の正解なのだと思う。バレルサウナの中で、天井の透明な部分から見えた吸い込まれるような星空の話や、白樺並木の眩い白さが目に焼き付いて離れないこと。私たちは、甘いものを口に運びながら、今日という日の断片を、パズルのようにゆっくりと組み合わせていた。正解のない会話が、夜の深まりと共に、心地よいリズムを刻んでいく。

琥珀色の光が、輪郭をぼかすとき

最後の一口まで食べ尽くし、散らかった包み紙を片付けたあとの静寂は、心地よい重量感を持って私たちに降りてきた。部屋の隅にあるベッドサイドランプが、琥珀色の光を静かに投げかけている。その光は、私たちの輪郭を曖昧にし、部屋の角にある鋭い影を優しく塗りつぶしていた。シェードの縁から漏れる淡い境界線が、まるでこの空間だけが世界から切り離されたシェルターであるかのような錯覚を抱かせる。誰かが小さくあくびをし、誰かがふっとため息をついた。言葉にしなくても、今この瞬間の心地よさを共有していることがわかる。それは、深い理解というよりも、ただ同じ周波数にチューニングされている状態に近いのかもしれない。部屋を包む温かな霞のような光の中で、私たちはゆっくりと布団に潜り込んだ。外ではまだ、秋の風が白樺の葉を揺らし、乾いた音を立てているはずだ。でも、今の私たちには、この狭い空間にある静けさと、かすかに残る甘い香りが、何よりも十分な贅沢に感じられた。

窓の外で、月が白樺の枝に静かに引っかかっていた。

  • 柳月スイートピアガーデンの「あんバタサン」を、夜食の締めにしてほしい。
  • 早朝、まだ誰もいない白樺並木を、あえて何も話さずに歩いてみることをおすすめする。