← 戻る 東急ステイ 函館朝市 灯の湯

冷たい空気が、眠い目を無理やりこじ開けた瞬間

冷たい空気が、眠い目を無理やりこじ開けた瞬間

記憶の隙間に滑り込んだ、5つの予期せぬ断片

朝市の喧騒と、絶望的なまでの寝坊
ホテルを出てわずか1分。潮の香りと新鮮な魚介の匂いが濃密に混ざり合った、あの独特な空気が、まだ半分眠っている脳を強引に叩き起こす。濡れた石畳の冷たさが靴底からじわりと伝わり、競売のような威勢のいい掛け声が鼓膜を打つ。「誰が一番に起きるか」という馬鹿げた賭けに負け、ぼんやりとした顔で歩いていたはずなのに、気づけば一番いい顔をして贅沢な海鮮丼を頬張っていた。その情けないほど幸せそうな友人の姿に、私たちは腹を抱えて笑った。

靴乾燥機が刻む、静かな安らぎのリズム
5月の不意な雨でしっとりと濡れたスニーカーを、部屋に備え付けの乾燥機に放り込む。ゴトゴトと低く回る機械的な振動が、静まり返った部屋に一定のリズムを刻み、足元からじんわりと温もりが伝わってくる感覚。効率的な設備であるはずなのに、なぜかそこに「旅の疲れ」という目に見えない重い荷物を預けているような、妙に人間味のある安心感があった。心地よい温もりに包まれながら、「明日もまた歩こう」と自然に思えた瞬間だった。

18階の空気が、肺の奥まで洗い流す感覚
東急ステイ 函館朝市 灯の湯の18階露天温泉に身を浸した瞬間、肌を刺す冷たい夜風と、芯まで熱いお湯の激しい温度差に、思わず肺の中の空気がすべて押し出された。目の前に広がる函館の夜景が、立ち上る白い湯気に溶けて、淡い光の粒になってぼやけていく。あそこで誰が一番長く耐えられるかという、中学生のような幼稚な競い合いをしたけれど、結局みんな5分もしないうちに「もう無理!」と笑いながら降参し、熱い湯の中で肩を寄せ合った。

ラグジュアリーツインのキッチンで囲んだ、低予算の晩餐会
コンビニで適当に買い込んだ地元の地酒と、見たこともない名前のつまみを、ラグジュアリーツインの小さなキッチンに並べる。電子レンジが回る低い唸り音と、グラスに酒を注ぐ心地よい音が重なり、部屋の中は小さな祝宴の会場に変わる。豪華なディナーではないけれど、狭い空間に肩を寄せ合って、誰のせいで予算がオーバーしたかを言い合う時間が、どんな高級店での食事よりも贅沢で、心を満たしてくれると感じた。

北海道産アイスクリームによる、心地よい脳震盪
ラウンジで提供されていた北海道産のアイスクリームが、予想を遥かに超える鋭い冷たさで、一瞬だけ思考が真っ白に停止した。あまりの冷たさに頭を押さえて悶絶している友人の顔を見て、同時に吹き出す。そんな些細なことで笑い合える距離感が、Tokyu Stay Hakodate Asaichi Akari no Yuという空間に、静かに、けれど心地よく馴染んでいた。冷たい甘さが、旅の終わりの寂しさを塗りつぶしていくようだった。

重なり合って、一つの景色になったもの

バラや藤が咲き始めた5月の街は、どこか気取っていて、それでいて優しい。計画通りにいかないもどかしさが、この静かな器に注がれることで、心地よいリズムに変わっていく。気圧が変わる直前の張り詰めた緊張感が、熱い湯に浸かり、心ゆくまで笑い合うことでゆっくりと解けていく。完璧な旅なんて退て屈だ。欠けている部分があるからこそ、そこに誰かが入り込む余白が生まれる。その空白こそが、旅の正体なのかもしれない。

心地よい疲労感に包まれて、最後の一口のアイスを分かち合った。

  • 朝市へは、あえて予定を決めずに、潮の匂いに誘われて歩いてみてほしい。
  • 部屋の洗濯機をフル活用して、荷物を最小限にする贅沢を味わって。