← 戻る OMO5函館 by 星野リゾート

靴下が片方ないまま、暖かい湯気に包まれた

函館の冬を彩る、家族の記憶を刻む五つの音

プシュー、と心地よく空気が抜けるバスのドアの音。OMO5函館 by 星野リゾートの専用バスに乗り込んだ瞬間、一番上の子が「絶対窓側がいい!」と、小さな体で必死に場所を確保していた。車内に満ちる暖房のぬくもりと、運転手さんの穏やかな会釈。自分たちで運転して迷い込むストレスから解放された安心感が、窓の外に広がる冬の冷たい空気さえも、心地よい旅のスパイスに変えてくれた。

カチャカチャと、色とりどりの器が触れ合う賑やかな音。市場の活気をそのままに再現した朝食会場で、下の子が「このごはん、なんでピンクなの?」と不思議そうにいか飯を指差していた。炊き立てのご飯から立ち上る甘い湯気と、鼻腔をくすぐる潮の香り。完璧に整った食事というよりは、家族みんなで競い合うようにして「美味しいもの」を探し出す、そんな賑やかで贅沢な朝の風景がそこにはあった。

バシャバシャと、お湯を跳ね上げる子供たちの笑い声。源泉かけ流しの温泉に身を委ねると、外の寒さで強張っていた肌が、じわじわとほどけていく。子供たちが浅いところで水遊びに興じ、大人はそれを半分諦めながら、ただ心地よい温度に身を任せて眺める。お湯の温もりが家族の心の壁を緩め、言葉にしなくても通じ合える、穏やかな一体感に包まれていた。

パチパチと、ラウンジのファイヤープレイスで薪がはぜる音。外はもう深い闇に包まれ、11月の夜風が窓を叩いているけれど、ここではオレンジ色の炎がゆっくりと揺れている。いつもは一秒もじっとしていない子供たちが、不思議と静かに火を眺めていた。「綺麗だね」と誰かが小さく呟き、誰かが誰かの肩に頭を預ける。そんな、名前のない静寂が心地よい時間だった。

ササッ、と清潔な布団が擦れる音。深夜、ようやく寝静まった部屋で、子供たちの規則正しい寝息だけが静かに響いている。パリッとしたシーツの質感と、子供たちの柔らかな体温が混ざり合い、部屋全体が大きな繭になったみたいだ。準備に手間取り、靴下を片方失くし、予定通りにいかなかった一日だったけれど、この重みのある静寂こそが、旅の本当の答えだったのかもしれない。

子供たちの頬に残っていた、夜の冷たい空気の匂い。

  • 函館山ロープウェイへの移動は、迷わず専用バスを使うこと。子供が疲れてぐずっても、そこが一番安全な避難所になる。
  • 海鮮朝食は、少し早めの時間帯に。心に余裕がある状態で、いか飯の不思議な色をゆっくり観察できるから。