指先に触れる地図の端が、五月のしっとりとした海風を含んだ湿気で、少しだけ波打って破れていた。目的地まであと数ブロックというところで、私たちは完全に方向を間違えていたけれど、誰もそれを気にしていなかった。むしろ、その迷走こそがこの旅の正解だったと感じる。OMO5函館 by 星野リゾートを拠点に歩き出した函館の街は、若葉の青い香りと、遠くの港から響く船の汽笛が混ざり合い、心地よい不協和音を奏でていた。
私たちの旅は、まるで真っ白なキャンバスに落とした一滴のインクが、ゆっくりと繊維に沿って広がっていくプロセスに似ていた。最初は個別の色を持っていたはずの私たちが、時間とともに混ざり合い、輪郭を失い、この街の淡い色彩に染まっていく。そんな、心地よい喪失感に包まれていた。
港町の迷宮で試した「正解を捨てる4つの作戦」
「ぐるぐるバス」で直感のままに降りてみる
効率的な観光ルートを捨て、心地よいエンジン音に身を任せて「なんとなく」で降りてみた。結果、潮風に混じって漂うバラの香りに誘われ、名もなき路地裏の庭園に迷い込むという大正解を導き出した。
「海鮮ファイブスターズ」を胃袋の限界まで攻める
朝食の豪華な海鮮メニューをすべて制覇しようと意気込んだが、目の前で弾ける炙り焼きの香ばしさと、真っ白な湯気に包まれた潮ラーメンの誘惑に完敗。3品目でキャパシティに達し、「もう無理」と笑い合いながらも、最後の一粒まで贅沢に味わい尽くした。
夜景の代わりにラウンジの火を眺める
定番の夜景もいいけれど、OMO5函館 by 星野リゾートのラウンジで揺れるオレンジ色の炎に、ただぼーっと見入ってみた。外の凛とした冷気と、室内の柔らかな温もりの境界線で、グラスを傾けながらとりとめもない話を交わす時間は、どんな絶景よりも贅沢なひとときだった。
赤レンガ倉庫街で「一番奇妙なアイス」を探す
誰が一番「正解から遠い味」を選べるかという賭けに挑戦。誰も正体を掴めない不思議な組み合わせに挑み、一口食べた瞬間に訪れた絶妙な違和感に、全員で「これはないわ」と顔を見合わせた瞬間、私たちはただの愉快な迷子になれた気がした。
旅のスコアボード
結局、最も価値があったのは、計画を海に投げ捨てて得られた「空白の時間」だった。海鮮朝食は五感への鮮やかな攻撃のような快感であり、バスでの迷走は旅に奥行きを与える最高のスパイスとなった。正解を外す心地よさが、港に停泊する船のように私たちの関係に静かに定着した気がする。海鮮に夢中で箸の使いかたを忘れた私を、友人たちが冷ややかな目で見ていたのは、今思い出しても少し恥ずかしい。
裸足で触れたタイルのひんやりとした感触と、ふかふかのベッドの体温が、今も肌に心地よく残っている。
- ぐるぐるバスで、あえて「名前が気になるバス停」で降り、そこからホテルまで街の呼吸を感じながら歩いて戻ってみてほしい。
- 市場で、店員さんの「おすすめ」とは真逆の、一番地味で正体不明な食材をあえて選んでみるという遊びを提案する。