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冷えた指先と、誰かが淹れたコーヒーの湯気

冷えた指先と、誰かが淹れたコーヒーの湯気

バルコニーのサッシの隙間に、一枚の枯れた葉が挟まっていた。誰の風に運ばれてきたのかもわからないけれど、それはただそこに留まっていて、指で弾くと乾いた音を立ててひらりと落ちた。そんな小さな違和感から、私たちの贅沢な滞在は始まった気がする。

予定調和を心地よく裏切った5つの瞬間

「誰が一番に起きるか」という賭けの完全な敗北
雲に包まれているようなふかふかの羽毛布団が肌に吸い付く感覚が心地よすぎて、私たちは全員、朝日の訪れを完全に忘れていた。「明日は誰が一番に起きて、函館山の絶景を独占するか」という意気込みで賭けをしていたはずなのに、結果的に全員が正午近くまで泥のように眠りこけていた。目が覚めたとき、部屋に差し込む光が驚くほど柔らかく、琥珀色に溶けていて、「計画通りにいかないことの快感」に、みんなで小さく笑い合ったのを覚えている。

最高級キッチンで繰り広げられた「素人料理」の惨劇
市場で買ったばかりの、潮の香りが濃厚なウニとホタテを抱えて、ヴィラ・コンコルディアリゾート&スパ / Villa Concordia Resort & Spaのキッチンに乗り込んだ。指先に触れるステンレス天板のひんやりとした冷たさに身を引き締めながら、いかにも「大人の別荘ごはん」を演出するつもりだったけれど、実際には火加減を完全に見誤り、ホタテを少し焼きすぎた。それでも、少し焦げた磯の香りと、不格好な盛り付けを互いに笑い合った時間は、どんな高級レストランのコース料理よりも深く、温かい記憶として刻まれている。

真空管アンプが奏でる、胸の奥に響く低音の温度
リファスイートに備え付けられた真空管アンプから流れる音楽は、デジタルな音とは全く違う、血の通った温度を持っていた。オレンジ色の真空管がぼんやりと灯火のように光るのを眺めていると、音が耳ではなく、胸のあたりで小さく振動しているように感じられた。音楽が空間の密度をゆっくりと変えていく感覚。私たちは言葉を止めて、ただその心地よい周波数に身を任せていた。静寂さえも、音楽の一部として溶け込んでいるような、濃密な時間だった。

ライブラリーの暖炉の前で、意識が溶け出した時間
1階のライブラリーで、北欧風の家具が醸し出す静謐な空気に包まれながら、革張りの椅子のひんやりとした感触に身を沈めた。暖炉から伝わる乾いた熱が、10月の冷えた体にゆっくりと染み込んでいく。適当に選んだ本を数ページだけ読み、気づけば心地よいまどろみの中にいた。古い紙の匂いと薪がはぜるパチパチという小さな音。誰にも邪魔されないという贅沢が、物理的な重さを持って私たちを優しく包み込んでいた。

元町まで歩く道中で、頬を叩いた10度の風
ホテルを出て元町へと歩き出したとき、ひんやりとした鋭い空気が肺の奥まで入り込み、思考が真っ白にクリアになった。足元から伝わる舗装路の硬い感触と、時折どこからか聞こえてくる誰かの笑い声。特別な観光スポットを巡るよりも、ただ一緒に歩いて、風の冷たさに身を震わせながら「寒すぎない?」と言い合う。そんな当たり前のやり取りが、この旅で一番贅沢な時間だったのかもしれない。

断片的な時間が積み重なってできたもの

結局、私たちが計画していた「完璧なスケジュール」は、ほとんど機能しなかった。けれど、それでいいという気がする。ヴィラ・コンコルディアリゾート&スパ / Villa Concordia Resort & Spaという空間が、私たちの間に心地よい余白を作ってくれたから。予定をこなすことよりも、シーツの滑らかさに驚いたり、キッチンの使い勝手に四苦八苦したりすることの方が、ずっと「私たち」らしい時間だった。欠けていた計画が、そのまま心地よいリズムになり、孤独ではないけれど一人でいるときのような静かな充足感がそこにはあった。それは、何かを達成することではなく、ただそこに在ることを許された感覚だった。

カーテンの隙間から、函館山の深い緑が静かにこちらを覗いていた。

  • 市場で買った地元の新鮮な食材を、お部屋のキッチンで自由に調理して楽しんでほしい。
  • ライブラリーの暖炉のそばで、あえて何もせず、ただぼーっとする時間を確保して。