鼻腔を鋭く刺すような冷たい空気が、肺の奥深くまで入り込み、身体の芯を凍らせる。1月の石和温泉は、想像以上に「冬」の顔をしていた。チェックインして最初に身を委ねたロビーのソファ。その絶妙な沈み込み具合に、張り詰めていた緊張がふわりとほどけていく。私たちはそこで、これからこのホテルで何を「検証」するかを、真剣に、そしてかなり適当に話し合った。外の凍てつく世界とは対照的な、暖炉のような温もりに包まれた空間で、私たちの贅沢な作戦会議が始まった。
ホテル甲子園で私たちが挑んだ「冬の検証」リスト
- 奥庭の静寂に身を委ね、誰が一番長く黙っていられるか競う
- ストーンスパで「究極の無」に到達し、精神を浄化する
- 貸切露天風呂「吐竜」で、大人の色気と余裕を演出してみる
- 地ワインの芳醇な香りに酔いしれ、人生の深淵について語り合う
感情のスコアボード:正解は「予定外」の中にあった
振り返れば、この旅のハイライトは、計画していた「癒やし」ではなく、その隙間に落ちた小さな失敗たちだった。特に、露天風呂付客室風林で過ごした時間は、光の屈折のように幻想的だった。室内のプールに身を沈め、水面に映る逆さ富士を眺めていると、外の4.5度という凍てつく世界が、まるで遠い国の出来事のように感じられた。温かい水と冷たい空気の境界線。その曖昧な場所で、私たちは普段は口にしないような、とりとめもない話を交わした。完璧なスケジュールよりも、計画外の寒さに震え、予定外の昼寝に耽ることでしか得られない幸福がある。ホテル甲子園の広大な空間は、私たちのそんな不器用な振る舞いを、静かに、そして寛容に包み込んでくれた。
夜空に溶けていく白い湯気と、遠くで聞こえる冬の風の音。
- 21時過ぎに流れる奥庭大滝の音を、あえて誰とも喋らずに10分間だけ聴いてみてほしい。
- 武田神社へ初詣に行くなら、あえて一番寒い時間帯を選び、その後の温泉の温度差に賭けてみるのが正解だ。