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桜色の湯けむりが聞こえる頃

桜色の湯けむりが聞こえる頃

07:30、朝食ホールの光

桜の花びらはテーブルクロスにひっかかって、小さなピンクのしみを作っていた。老二が「なんで桜って食べられないの?」と聞いた時、老大は「食べたらお腹壊すよ」と答えて、二人は同時に「えーっ」と声を上げた。ホールに漂うのは、ネスプレッソのコーヒーの香りと、温泉街特有の硫黄のにおい。窓の外では、白根山の山並みが桜色に染まり始めていた。


14:00、客室の静寂

子どもたちは布団の上で寝息を立てていた。老二の足の裏には、うっすらと湯の跡がついていた。部屋の奥の和室からは、インナーテラス風リビングに設置された電気暖炉の光が漏れていた。火の揺らめきに合わせて、部屋の空気が微かに上下しているような気がした。シモンズベッドのマットレスは、子どもの体重を優しく支えて、まるで雲の上にいるようだった。


19:30、レストランのざわめき

老大は「温泉ってどうしてあついの?」と質問し、ウェイターが「地球のお腹の熱が地下水を温めるんです」と答えていた。テーブルには、草津名物の「湯もみ」を模した小さな飾りが置かれていた。子どもたちはそれを触りたがって、テーブルクロスを引っ張っていた。大人の会話は、仕事の話と「来年はどこに行こうか」という話で途切れなかった。


23:00、客室の明かり

深夜の冷え込みで、窓ガラスはうっすらと曇っていた。電気暖炉の音だけが、部屋に残っていた。老二が「ママ、温泉ってどうしてお湯が出るの?」と聞いた。私たちは「地球が温めてくれてるんだよ」と答えた。子どもたちは布団の中で体を丸め、老大は「 nuovamente 」と呟いていた。


静かに閉じるドアの音が、翌朝の朝食ホールに響くまで、この部屋はずっと同じ空気を保っていたのかもしれない。
  • ホテル一井の最上階8階から見る白根山の朝は、桜色の光で始まる
  • 電気暖炉の光は、子どもたちの寝顔を見守る唯一の灯り