浴衣の袖口
レースの触り心地は、指先にほんのわずかな抵抗を残す。洗濯物特有の生地の匂いが、袖口から立ち上る。袖を通した瞬間、首筋に草津の空気が触れた。微かな硫黄の匂いと、草の青臭さが混ざった、夏のにおい。客室の布団は、さっきまで誰かが座っていたように、わずかにへこんでいた。Dialogue about this thing
「このにおい、草津の空気が染み込んでるみたい」 君が袖口を引っ張って、レースの部分を指先でなぞる。 「ほんとうだね。でも、それだけじゃない気がする。温泉の湯気も混じってる」 僕たちは浴衣を着たまま、客室の窓を開けた。外はまだ明るい。空気は重く、湿っている。草津高原の風が、肌に冷たく当たる。この袖口が運んできたもの
この袖口は、7月の草津の記憶のすべてを運んでくる。浴衣の袖を通したとき、僕たちは二人だけの時間を手に入れた。温泉の湯気が、祭りの花火の音を包み込んでいた。七夕の短冊を買った夜、浴衣を着て歩いた道のり。袖口のレースが、誰かの指に引っかかるたび、あの瞬間を思い出す。浴衣を着た人たちが、草津の町を埋め尽くしていた。露天風呂から上がったばかりの人、祭りの屋台で買った焼きそばを手に持つ人、観光客と地元の人との区別がつかない。僕たちもその中の二人だった。
この袖口は、夏のにぎわいと静けさの両方を持っていた。温泉の湯気と祭りの音が、一つの場所で同時に存在していた。僕たちはその中心にいた。
袖を通した瞬間、ここが自分の場所だと思った。
- 七夕祭りの開催日程を事前に確認して、浴衣のレンタルを早めに予約する
- 草津ナウリゾートホテルの貸切露天風呂の空き状況をチェックし、特別に二人だけの時間を計画する