靴下が乾かない朝、荷物は重いまま
草津駅に降り立った瞬間、足元の空気が頬を刺した。凍えるような冷たさは、靴下が乾かない夜を象徴していた。タクシーのシートは暖房が効いていたのに、シートに触れた指先は痺れていた。荷物は重く、友達の「これ絶対行き違いだよね?」という声が、風に流れていった。部屋に入ったら、枕元に置かれた紙袋が目に留まった。中には草津温泉のお土産が入っているはずなのに、触ってみると硬いお饅頭の包みだった。友達が「お腹空いた?」と訊くので、思わず笑ってしまった。
薬師の湯 湯元館が教えてくれた4つのこと
■「温泉の匂いがする、その部屋」
浴槽に足を浸けた瞬間、温かさが骨の奥まで染みた。硫黄の匂いが鼻をつくが、その直後、窓の外の雪景色が目に飛び込んでくる。温泉の湯と雪の冷たさが、同時に体に染みる感覚は、この宿でしか味わえない。
■「朝ごはんは、おみくじつき」
白いご飯に添えられた漬物の酸味と、おみくじの紙のざらつきが、朝の第一口を作っていた。友達が「大吉」を引いて大はしゃぎしていたが、私は「凶」だった。でも、その「凶」の紙を握りしめていたら、なんだか運が良くなった気がした。
■「スタッフの声は、この町の音」
朝食のテーブルで名前を呼ばれた時、その声が廊下の木の床に吸い込まれていくのがわかった。 staffの声は、この宿のリズムを作っている。その声が聞こえなくなった瞬間、部屋に戻った時の静けさが、より際立った。
■「子供の足音は、ここでしか聞こえない」
子供連れの家族が足音を消すために踏んでいる厚いカーペットの感触と、その足音が聞こえなくなった瞬間の静寂。この宿では、子供の足音がこの空間の一部になっている。その静けさが、大人の疲れを癒してくれた。
予定にはなかった、その日の一番の贈り物
初詣の混雑を避けて、裏手の小道を歩いてみた。雪が積もった道は、靴底にくっついて重く感じた。忽然、梅の香りが鼻をくすぐった。雪の中にぽつんと咲く梅の枝が、白い景色に鮮やかなピンクのアクセントを添えていた。友達と無言で見上げていたら、携帯のカメラを向けられた。
その写真を後で見返すと、梅の花は小さく、でも確かに存在していた。計画にはなかったこの瞬間が、この旅の一番の贈り物になった。
風呂上がりのコーヒーは、今日一日の重みを溶かしてくれた。
- 草津駅から薬師の湯 湯元館までは、タクシーで10分。荷物が重ければ、無理に歩かなくていい。
- 朝食のおみくじで「凶」が出ても、気にしない。もしかしたら、それが一番面白い一日への招待かもしれない。