小さな靴が床を叩く音
指先に触れたルームキーの金属的な冷たさ。それが、私たちの旅の始まりだったのかもしれない。子供が「どうして?」と問いかけてから、大人が「それはね」と答えを出すまでの、あのわずかな空白の時間。家族旅行というものは、そんな小さなラグの積み重ねでで…
氷が溶ける音だけが、部屋に満ちていた
8月の長崎。肌にまとわりつく湿度は、まるで濡れたタオルを肩に掛けられたように重く、呼吸をするたびに街の熱気が肺に流れ込んでくる。路面電車のガタゴトという音と、時折響く鐘の音が、夏の午後の気だるさを加速させていた。駅を降りた瞬間、上の子の白い…