雨の那須高原で耳にした、家族の記憶を綴る五つの音
1. 濡れたスニーカーがロビーのタイルで鳴らす「キュッ」という高い音。それは、旅の緊張がほどけ、日常から切り離された合図のように響いた。子供たちが我慢できずに駆け出した瞬間、ホテルサンバレー那須の開放的な空間に、家族だけの賑やかなリズムが刻まれ始める。雨に濡れた衣服のひんやりとした感触と、ロビーに漂う温かなおもてなしの香りが、ここからは誰に遠慮することもなく、ただ一緒にいればいい時間なのだと教えてくれた。
2. 硫黄の香りが濃く立ち込める露天風呂で、下の子が上げた「バシャーン!」という大きな水しぶき。源泉かけ流し 露天風呂付洋室の心地よい湯気に包まれながら、見えない魚を追いかけていたらしい。大人は静寂に浸りたいものだが、子供にとっての温泉は、きっと世界で一番贅沢な巨大水槽なのだろう。頬に当たった温かい飛沫が、張り詰めていた心をふわりと緩ませ、騒がしささえも家族の体温のような心地よさに変わっていく。
3. 「ふくろうの森」のコテージに入ったとき、重い木製のドアが「カチリ」と閉まった音。その瞬間、90平米の広々とした空間が、僕たちだけの秘密基地に変わった。上の子が「ここは僕の陣地!」と弾んだ声で宣言し、部屋の隅を占領し始めたとき、この旅が予定調和ではなく、自由な冒険になると確信した。木のぬくもりと深い森の香りに包まれ、家では出せない少しだけ大胆な家族の形が、そこにはあった。
4. クイーンズコリーナの螺旋階段を駆け上がる、小さな足音の軽やかな反響。高い吹き抜けに音が吸い込まれ、心地よいエコーとなって戻ってくる。大人の私は「静かにしなさい」と口にしそうになったが、スタッフの方の柔らかな微笑みに触れ、その言葉を飲み込んだ。奔放なリズムに身を任せていいのだと自分に許可を出したとき、5歳児から「パパ、危ないよ」と精密な指摘を受け、その気まずさが可笑しくてたまらなくなった。
5. 夜の庭園で、紫陽花の葉がしっとりと風に揺れるサワサワという音と、隣で聞こえた「あ、いた!」という小さな囁き。暗闇の中でホタルを見つけた瞬間だった。誰かが誰かの手を強く握り、言葉にするまでもない共有された奇跡に、胸が熱くなる。9つの館が点在する広大な敷地に広がる静寂こそが、この旅で一番贅沢な音だった。湿った土の匂いと夜気の中で、私たちはただ、同じ呼吸をしていた。
濡れたタオルの清潔な香りと、隣で眠る子供の規則正しい寝息。
- 「ふくろうの森」に佇む木彫りのふくろうたちの中で、誰が一番自分に似ているか、家族で話し合ってみてほしい。
- 6月の那須は雨が多いが、あえて濡れたまま外を歩き、雨に打たれて紫陽花の色が深く濃くなる瞬間を眺めてほしい。