浴衣の袖が、小さな手に触れた瞬間
裸足で踏んだ畳の、少しだけひんやりとした感触から旅は始まった。七月の白浜は、空気が濃い。湿り気を帯びた潮風が肌に薄い膜を張るような感覚があり、どこか懐かしい夏の匂いが鼻をくすぐる。南紀白浜 和みの湯 花鳥風月に足を踏み入れたとき、私たちは「…
10月 family U
18 出汁の香りと、誰かが笑ったあとの静けさ
出汁巻き卵:料理長が毎朝引くという出汁の芳醇な香りが、湯気と共に部屋いっぱいに広がっていた。鮮やかな黄金色の身に箸を入れると、じゅわっと溢れ出す熱い出汁と、舌の上でほどける優しい塩味。普段は好き嫌いが激しく、食事の時間が小さな戦場になる長男…