← 戻る 浜千鳥の湯 海舟

二人の足の裏に残った春の温度

足の裏が温かくて、思わず目を閉じた。それは床の温度じゃなかった。数時間前まで誰も触れていないはずの、木のぬくもり。浜千鳥の湯 海舟の「暁の抄」に足を踏み入れた瞬間、床は生きていた。春分の日を過ぎたばかりの午後、この部屋には日差しが直接降り注いでいて、木目は陽の光を蓄えていた。まるで床が呼吸しているみたいで、息を呑むほどだった。

ベッドに置かれた布団はまだ整えられていなくて、誰かがさっきまでそこに横たわっていたように見えた。海は窓の向こうで小さく波を立てていた。波の音は部屋にまで届いていて、静かだけれど、決して沈黙しているわけじゃない。風が庭の梅の枝を揺らす音が、時折聞こえる。庭の梅はまだ蕾が固く閉じていたけれど、空気にはすでに春のにおいがしていた。 aquele cheiro de terra molhada depois da primeira chuva de março, só queこっちでは梅の花の甘い香りに混じっていた。

客室露天風呂のドアを開けると、湯気が部屋に流れ込んできた。源泉かけ流しのお湯は透明で、肌に触れる瞬間、温かさがじわじわと広がっていった。湯の匂いは硫黄じゃなくて、むしろ海の塩気と草の香りのような気がした。湯船に浸かって、海と向かい合う。波が打ち寄せるたびに、部屋全体がわずかに揺れているような錯覚に陥った。二人の間には何も言葉がなかったけれど、それが不自然な沈黙じゃなかった。むしろ、波の音がそのまま会話の代わりをしていた。

一時間ほど浸かって、湯船から上がると、足の裏が床に吸い込まれるように柔らかく感じた。ローテーブルにはウェルカムドリンクの梅ジュースが置かれていた。振っていないから色は透明に近い黄色で、梅の実の粒が底に沈んでいた。口をつけると、酸味が先に来て、それからほんの少しの甘さが後を追う。そのバランスが、春分の日の午後の光の角度と似ていた。

ロビーに降りると、香梅の庭の梅の花がちらほら咲き始めていた。白い花びらが地面に落ちていて、踏むとほんのり甘い香りが足元から立ちのぼった。庭の真ん中にある水盤には、まだ冷たい水が張られていて、水面に映る空は淡いピンク色だった。 rahvãの風が庭を通り抜けるたびに、梅の香りが強くなったり弱くなったりする。

風の庭のほうは、まだ梅の花は咲いていなかったけど、代わりに青いスミレが地面を這っていた。スミレの葉は冷たかったけれど、触っていて指先が温まってきた。二人は裸足で庭を歩いた。足の裏が石畳の凹凸に触れるたび、春の空気が肌を撫でていった。


  • 3月後半の白浜では、浜千鳥の湯 海舟の客室露天風呂で、源泉かけ流しのお湯に浸かりながら桜の開花情報をチェックしてみよう。桜の開花予想が出る季節だから、部屋の窓から見える海と桜のピンクが重なる瞬間を狙うのもいいかもしれない。
  • ひな祭りの時期には、館内のラウンジで季節のお菓子と一緒に抹茶をいただくと、梅ジュースの酸味とのバランスが絶妙で、春の訪れをより感じられるだろう。