2月の白浜は、空気が張り詰めていて、吸い込むたびに鼻の奥がツンとする。車を降りた瞬間、冷たい風が頬を叩いたけれど、FIVE SPRING RESORT THE SHIRAHAMAのドアが開いた瞬間、そこには別の時間が流れていた。温かい空気と、どこか懐かしく落ち着くアロマの香りが、凍えていた指先をゆっくりと解いていく。もともと、家族旅行なんていうのは、誰にとっても「戦い」に近いものだと思う。目的地に着くまでに誰かが泣き、誰かが飽き、大人はそれをなだめるのに必死になる。でも、ここでの時間は、その混沌さえもデザインの一部であるかのように、静かに受け入れてくれる気がした。
特にグレイト・ベアの部屋に入った時の、あの感覚が忘れられない。床に足を踏み出した瞬間、厚い絨毯が足首まで包み込み、子供たちの走り回る足音がふっと吸い込まれて消えた。広すぎるリビングで、次男が浴衣をマントのように羽織って走り回り、長女が「ここ、お城みたい!」と歓声を上げる。普通なら「静かにしなさい」と口にする場面だが、この空間が持つ圧倒的な余裕が、私の心の余裕に変わっていくのが分かった。豪華さというのは、金箔がついていることではなく、誰がどんなに騒いでも、それを優しく飲み込んでくれる「余白」があることなのだ。
オールインクルーシブという贅沢は、単に無料のサービスがあることではなく、「財布を気にせず、ただ目の前の相手に集中できる」という精神的な自由をくれる。朝、レストランで向き合ったのは、南紀白浜の恵みを凝縮したビュッフェ。湯気が立ち上る伊勢海老を前にして、子供たちが目を輝かせている。食べ方が分からず、口の周りをソースだらけにしながらも、「おいしい!」と笑い合う。そんな光景を眺めながら、私はゆっくりとコーヒーを啜った。カップから立ち上る苦い香りと、窓の外に広がるどこまでも青い空。世界が新しく塗り替えられたみたいに澄んでいた。
完璧なスケジュールなんて、最初からなくていい。ただ、この柔らかいベッドに身を沈め、誰かが隣で静かな寝息を立てている。それだけで、十分すぎるくらいに満たされていた。
家族で分かち合った、5つの記憶の断片
サータ製ベッドの深い沈み込み:身体を預けた瞬間、心地よい重力に抱かれ、意識がゆっくりと溶けていく感覚。一番先に深い眠りに落ちたのは、一日中暴れ回っていた次男だった。
伊勢海老の濃厚な芳香:朝の光の中で、芳醇なバターと潮の香りが混ざり合う。殻を剥くのに苦戦しながらも、「本物の海老だ!」と目を輝かせていたのは長女。
客室に飾られた現代アート:壁を彩る鮮やかな色彩と大胆な筆致。それが何に見えるか家族で話し合ったが、「宝島の地図だ」と断言したのは、想像力豊かな次男。
タンのアメニティが放つ香り:レモングラスの爽やかな香りが、指先から心へと広がっていく。子供たちのベタついた手を洗い流した後の、あの清々しさに一番に気づいたのは私。
冬のインフィニティプール:刺すような冷たい外気と、肌を包み込む温かな湯の鮮やかなコントラスト。プールの縁が空に溶け込み、海と一体化した景色に、ふっと深いため息をついたのは夫。
梅の香りがかすかに漂うドアを閉めて、私たちはまた、愛おしく賑やかな日常へと戻る。
- 早朝の冷え込みが心地よい時間帯に、近隣の梅まつりへ足を伸ばして、春の足音を探してみてください。
- グレイト・ベアの広いリビングで、あえて何もしない時間を家族で共有し、ただのんびりと過ごす贅沢を。