冷たい指先を温めた、お茶の湯気
冬の朝の空気は、肌に触れると少しだけ痛い。焼津グランドホテルの「海側トリプル」の客室で、まずは静岡の伝統工芸士が手がけたしっとりとした茶器に、ゆっくりとお湯を注ぐ。茶葉がゆっくりと開き、琥珀色の液体が器を満たしていく様子は、まるで静かな浸透…
お茶の香りと、誰かの走る足音
ロビーに足を踏み入れた瞬間、耳に飛び込んできたのは、磨き上げられた大理石の床に弾けるスーツケースの乾いた音だった。五月の空気はまだ心地よい冷たさを孕んでいたが、開かれた窓から流れ込む新緑の香りが、遠い季節の訪れを告げている。静寂が丁寧に設計…