「ちょっと待って、誰がここを近道だって言ったの?」
「えっ、だって地図では直線だったし!信じてよ!」
「信じられるわけないでしょ!直線なのはいいけど、途中に川があったじゃない。もう足がパンパンで、一歩も動けないんだけど」
「あはは!そんなに怒るなって。ほら、見てよあの建物、すごくレトロで綺麗だよ?」
「景色とかいいから!責任取ってよ、もう。私のお気に入りの靴、泥がついちゃったし」
「いいよ、賭けよう。次においしい店見つけた方が勝ち。負けた方が明日の朝食代を全部出すってことでどう?」
「乗った!絶対負けないから!」
笑い声が11月の台中の澄んだ空気に溶けていく。冷たい風が頬を撫で、どこからか漂ってくる甘い夜市の香りが鼻をくすぐる。互いの不手際をなじり合い、わざと迷路のような路地へと足を踏み入れる。そんな不毛な時間が、実はこの旅で一番贅沢な瞬間なのだと、私たちはまだ気づいていない。
荘厳な静寂に溶け込む、私たちの不協和音
OhotelOhotel麗加園邸酒店の重厚な扉を開けた瞬間、外の喧騒が嘘のように消え、代わりに吸い込まれるような静寂が訪れた。6階分まで吹き抜けた大ロビーは、まるで現代に再現されたローマの万神殿だ。高くそびえる天井から降り注ぐ光と、大理石の床に反射するシャンデリアの煌めきが、私たちの場違いな騒がしさを白日の下にさらしている。けれど、その圧倒的な空間こそが、私たちのくだらない言い争いを心地よいスパイスに変えてくれた。豪華な空間に身を置くことで、自分たちの不器用さが際立ち、それがかえって可笑しくて、私たちはまた小さく笑い合った。
案内された客室に入ると、そこには身体を優しく包み込む白い海のような巨大なベッドが待っていた。6フィートもの幅があるそのマットレスにダイブすると、シーツのひんやりとした肌触りと、かすかに漂うリネンの清潔な香りが、一日中歩き回った身体の緊張をゆっくりと解いていく。裸足で触れるタイルの冷たさが心地よく、バスルームへと向かう数歩の間、自分の呼吸が次第に深く、穏やかになっていくのがわかった。
シャワーから出る熱い湯の強い水圧が、首筋の凝りを丁寧にほぐし、視界を白く染める湯気が心を浄化していく。窓を開けると、22度の絶妙な温度の風がカーテンを軽やかに揺らした。近くの店で食べた福州意麺の、あの弾力のある麺と濃厚な肉燥の味が、まだ記憶の端に心地よく残っている。OhotelOhotel麗加園邸酒店という贅沢な静寂の中で、私たちはただの旅人ではなく、かけがえのない時間を共有する共犯者であることに気づかされる。空間の格調高さが、私たちの絆をより鮮明に、そして大切にさせてくれるようだった。
深夜二時、本音の温度
「ねえ、10年後もこうやって喧嘩しながら旅してられるかな」
「どうだろうね。たぶん、もっとひどい言い合いになってると思うよ。お互い年取って、足腰が弱くなってさ」
「あはは、最悪!でも、そういうのがいいよね。誰にでも言えることじゃないし」
「……まあ、たまにはこういう時間も必要かもな。一人で贅沢しても、誰かに『最低』って言われないと、実感がわかないし」
エアコンの低い唸りだけが部屋に満ち、昼間の喧騒が嘘のように静かな時間が流れる。暗闇の中で交わされる言葉は、昼間よりもずっと重く、そして温かい。誰かが小さくついたため息は、寂しさではなく、心地よい充足感に満ちていた。正解のない未来への不安さえも、この部屋の柔らかな間接照明が優しく包み込んでくれる。私たちは、ただ一緒に迷っているという感覚に、何よりも深い安心感を抱いていた。
街灯の淡い光が天井に揺れ、私たちの影がゆっくりと重なっていた。
- パークツー草悟広場で、巨大なサボテンに囲まれて贅沢に時間を潰してほしい。
- 国立台湾美術館の周辺を、あえて目的を決めずに散歩するのがおすすめ。