五月の台中の空気は、まるで濡れた毛布のように肌にまとわりついてくる。梅雨が訪れる直前の、あの重たくてどこか心細い湿度。遠くの山の方でゴロゴロと低い雷鳴が響き、風が吹くたびに皮膚の産毛が小さく逆立つのを感じた。私たちは、ホテルの近くのコンビニで、「誰が一番不必要なものを買うか」という、大人の遊びにしてはあまりにくだらない賭けをしていた。結果、ビニール袋に詰め込まれたのは、見たこともない色の地元のスナック菓子と、贅沢すぎる量のプリン、そして誰の口にも合わなそうな蛍光色の飲み物。袋の持ち手が指に食い込む感触と、カサカサという乾いた音が、夜の静寂に不自然に響く。old school行旅のモダンで落ち着いたエントランスに辿り着いたとき、私たちは互いの戦利品を見て、同時に呆れたような笑い声を上げた。あれだけ「ダイエット中だ」と誓い合ったはずなのに、結局は食欲という抗えない本能に敗北しただけ。けれど、その心地よい敗北感こそが、この旅の本当の始まりだったのかもしれない。
油っぽい指先と、深夜の告白
「ねえ、ぶっちゃけ、ホタルなんてほとんど見えなかったよね」
ベッドの上にコンビニ袋をぶちまけながら、友人がポテトチップスを口いっぱいに詰め込んで言った。山の方までホタルを探しに行ったけれど、実際に見えたのは、暗闇の中で必死に羽ばたく正体不明の虫と、私たちの情けない悲鳴だけだった。パリパリという小気味よい音が、静かな部屋に響き渡る。
「いや、あれは立派なホタルだったと思うよ。たぶん、すごく恥ずかしがり屋な個体だったんだよ」
私が適当に返すと、隣でプリンをスプーンで掬っていた友人が、口の端にクリームをつけたまま吹き出した。プラスチックのスプーンがカップに当たるカチカチという音が、どこか心地いい。
「言い訳がすぎるって。あんなの、ただの光る虫。それに、母の日のプレゼントを買い忘れて、結局駅前の店で適当に百合の花をセットにしたやつを買ったときの方が、よっぽどスリルあったし」
「あー、あの店員さんの『本当にこれでいいんですか?』っていう、憐れみに満ちた顔ね。あれはトラウマ級だった」
私たちは、そんなくだらない失敗を一つずつ、丁寧に、そして残酷に掘り起こしていく。端午の節句が近いせいか、街中で見かけた賑やかな準備の様子や、迷い込んだ路地裏で出会った奇妙な看板の話。計画していた「完璧な観光ルート」なんて、もう誰も覚えていない。ただ、指先に残った油っぽさと、部屋に漂うかすかなアロマの香りが混ざり合っている。一階の共有スペースを通り過ぎて部屋に上がってきたとき、このホテルの静謐さに惹かれたはずなのに、今の私たちのこの乱雑な食卓は、その正反対にある。けれど、old school行旅の洗練された空間に、私たちの不格好な笑い声が溶け込んでいく感覚は、誰にも邪魔されない秘密の作戦会議に似ていて、たまらなく贅沢に感じられた。
降り積もる静寂と、深い眠りの予感
夜食が尽き、言葉もゆっくりと消えていった。部屋の中には、食べ終わったパッケージの山と、飲み干したカップの跡だけが残っている。ふと気づくと、外の雨が降り始めていた。窓ガラスを叩く不規則なリズムが、室内の静寂をより深いものにする。この都会の隠れ家のような空間で、私たちはただ、同じ方向を向いて横になっていた。シーツのひんやりとした感触と、隣にいる友人の体温が混ざり合う境界線。old school行旅のベッドと枕は、驚くほど身体を深く、優しく受け止めてくれる。その包容力に身を任せていると、旅の緊張がゆっくりとほどけて、意識が心地よく遠のいていく。孤独というものは、一人でいるときにやってくるのではなく、誰かと一緒にいても、ふと自分の輪郭が見えなくなった瞬間に訪れるものだと思っていた。でも、この四方の壁に囲まれた安息の地の中では、その孤独さえも、共有できる贅沢な一部のように感じられた。明日になれば、また賑やかな街へ繰り出し、誰かが期待する「旅人」を演じることになる。けれど、この深夜の、ぬるくなったお茶のような時間だけは、誰にも渡したくない。そんな気がした。
枕元に置かれた冷たいお茶のグラスに、街灯の淡い光が小さく揺れていた。
- 台中市街地で買える、濃厚な地元産パイナップルケーキと冷たい牛乳の組み合わせ
- 深夜のコンビニでだけ出会える、甘すぎる台湾限定のタピオカミルクティー