4月の台中の空気は、しっとりと肌にまとわりつく。温度は24度前後。心地よいはずなのに、どこか落ち着かない、春特有の浮ついた湿度だ。私たちは、誰が一番早く「お腹が空いた」と白旗を上げるかという、くだらない賭けをしていた。結果、全員が同時に口を開いたとき、私たちは完敗を認め、そのまま一中街の喧騒へと飛び出した。街には揚げ物の香ばしい匂いと、若者たちの弾けるような話し声が幾重にも重なり、濃密な層を作っている。遠くの山の方では桐花が白く咲き乱れているというが、今の私たちにとって重要なのは、目の前の屋台で売っている正体不明の揚げ物と、結露して冷たくなったタピオカミルクティーの心地よい重みだった。コンビニのビニール袋が指に食い込む感覚さえ、心地よい期待感に変わる。それを大切に抱えて、私たちの拠点である「台中一中時尚商旅」へと急いだ。ロビーに足を踏み入れた瞬間、外のねっとりとした湿り気を切り裂くような、凛とした冷たい空気が肌を撫でる。エレベーターの静かな上昇音を聞きながら、私たちはすでに頭の中で、どの順番で夜食を広げるかという緻密な作戦を練っていた。カードキーがカチリと鳴ってドアが開いたとき、そこには清潔でモダンな、私たちだけの秘密のシェルターが待っていた。
揚げ鶏と、不完全な旅の計画について
「ねえ、なんでわざわざこんなに大量に買ったの? 私たちの胃袋がブラックホールだと思ってる?」
ベッドの上に広げられたプラスチックの容器と、色とりどりの袋。誰が持ってきたかもわからない、甘辛いタレがたっぷりかかった鶏肉の塊を指差して、友人が呆れたように、けれど嬉しそうに笑う。
「いいじゃん。だって、この匂いを嗅いでスルーできる人間がこの世にいると思う? むしろ、これを買わなかったら、明日まで後悔して眠れなかったかもしれないし」
「後悔っていうか、ただの食い意地でしょ。っていうか、さっきの桐花見に行く計画はどうなったの。あれ、誰が言い出したんだっけ」
「あー、あれね。まあ、今はこの鶏肉が私たちの『白い花』みたいなもんでしょ。見てよ、この照り具合。芸術的じゃない?」
私たちは、ホテルの機能的なデスクに身を寄せ合い、ストローでタピオカを啜りながら、今日一日の「効率的な失敗」について語り合った。予定していた観光スポットの半分も回れなかったし、道に迷って同じ場所を三回も通り過ぎた。けれど、そんなことはどうでもよかった。冷房が効いた部屋の中で、裸足で踏むタイルのひんやりとした温度が心地よく、くだらない冗談で笑い転げる。この部屋の照明は、ちょうどいい具合に柔らかい琥珀色で、私たちのとりとめもない会話を優しく包み込んでくれている。誰かが口いっぱいに食べ物を詰め込んだまま、「ここ、本当に居心地いいよね」と呟いた。その言葉に、誰も反論しなかった。
満たされた胃袋と、贅沢な空白
賑やかだった時間が、潮が引くようにゆっくりと遠ざかっていく。散らかった容器を片付け、最後の一口を飲み干したとき、部屋には贅沢な静寂が戻ってきた。エアコンの低いハム音が、一定のリズムで空間を埋め、心地よい眠気を誘う。私たちは、それぞれに広いベッドへ体を沈めた。シーツのパリッとした清潔な感触と、適度な弾力が、旅の疲れを吸い取るように体を支えてくれる。外からはまだ、一中街の遠い喧騒がかすかに聞こえてくるけれど、それはもう、私たちとは関係のない別の世界の音のように感じられた。もしかしたら、旅の本当の目的は、有名な景色を写真に収めることではなく、こういう「何もしない時間」を誰と共有するかということだったのかもしれない。暗くなった部屋の中で、天井に反射する街の明かりをぼんやりと眺める。隣で誰かが小さく、安心しきった寝息を立て始めた。明日になればまた、あの大通りへ出て、新しい何かを探しに行くのだろう。でも今は、この静かな空白の中に、ただ身を任せていたい。自分たちがここにいていいのだという、静かな確信だけが、心地よい重みとなって胸に溜まっていく。
窓の外で、台中の夜がゆっくりと深い呼吸を繰り返している。
- 一中街の路地裏で見つけた、シナモンの香りが漂う揚げパン。
- 氷が溶けて味が薄まる前に、一気に飲み干すタピオカミルクティー。