11月の東京は、頬を撫でる風に鋭い冷たさが混じり始める季節だ。錦糸町駅の南口を出て、歩道橋を渡る時のあの、少しだけ浮き足立つ感覚。足元では、子供たちがどちらに歩くべきか言い合いながら、私のコートの裾を交互に引っ張っている。街のネオンは賑やかで、絶え間なく流れる車の走行音は重なり合って、まるで調律前のオーケストラのような騒がしさだった。けれど、京成リッチモンドホテル 東京錦糸町に足を踏み入れた瞬間、その喧騒がふっと遠のく。それは、単に騒音が消えたのではなく、心地よい静寂という別のレイヤーが、都会のノイズの上にそっと重ねられたような感覚だった。
本当は、家族旅行なんていうのは、どこまでも「作戦」の連続だと思う。誰がいつ機嫌を損ねるか、どのタイミングで休憩を入れるか。親としての私は、常に正解という名のスケジュール表を握りしめていた。けれど、このホテルの穏やかな空気に身を置いていると、そんなコントロールしようとする強張った気持ちが、ゆっくりとほどけていくのが分かった。不意に、子供たちがホテルのスリッパを履いて「大きすぎる!」と笑いながら、ペンギンみたいにペタペタと廊下を歩いている。その滑稽で愛らしいリズムを聞いているうちに、予定通りにいかないことこそが、この旅の本当の輪郭なのだと気づかされる。私たちは、正解を探しに来たのではなく、ただ一緒にここにいるという確かな体温を確かめに来たのかもしれない。
家族の心に灯った、5つの小さな記憶
真っ白なデュベスタイルのベッド。Moderate Roomに足を踏み入れた瞬間目に飛び込んできた、雪原のような白さ。シーツが肌に触れた時のパリッとした冷たさと、その後にやってくる羽毛の柔らかな包容力。深く沈み込む感覚が、一日中歩き回った足の疲れをゆっくりと吸い上げてくれる。一番下の子供が、誰よりも先にダイブして、白い海に溺れたように声を上げて笑っていた。
ロビーで見つけた一冊の絵本。紙の端が少しだけ丸まった、使い込まれた質感と、古いインクの懐かしい匂い。部屋の明かりを少し落として読み聞かせを始めた時の、子供たちの静かな呼吸と、ページをめくるかすかな音。一番上の子が、物語の続きを気にして、私の腕をぎゅっと握りしめていた。
ラタン素材の家具。指先でなぞると感じる、不規則でざらりとした天然素材の温度と、乾いた木の香り。都会の真ん中にいながら、どこか遠い森の中にいるような、視覚的な静けさがそこにはあった。隣にいたパートナーが、深くため息をついて「ここなら落ち着ける」と小さく呟いたのが聞こえた。
子供用のアメニティセット。大人のものよりもずっと小さな、愛らしいサイズの歯ブラシ。その小ささが、「あなたたちは歓迎されているよ」というホテルからの無言のメッセージのように感じられて、胸の奥がじんわりと温かくなった。パッキングをしていた私が、その細やかな心遣いに気づいて、ふふっと笑った。
駅からの5分間の風。冷たい空気の中に混じる、どこかの店から漂う温かい肉まんの匂い。歩道橋から見下ろす車のライトの列が、まるで光の川のように流れていた。京成リッチモンドホテル 東京錦糸町へ向かう道中、家族全員で「寒いね」と言い合いながら、肩を寄せ合って歩いたあの短い距離こそが、旅の最高のプロローグだった。
窓の外に広がる夜の東京を眺めながら、子供たちの寝息に耳を澄ませる贅沢な時間。
- 錦糸町駅からの歩道橋を渡る際、あえて少しゆっくり歩いて、街の灯りと冷たい風のコントラストを楽しんでみてください。
- Corner Superior Roomに宿泊して、二方向から差し込む光の移ろいと共に、家族それぞれの静かな時間を過ごすのがおすすめです。