← 回到 APA飯店〈京都站東〉

小さな指先が触れた、春の温度

ベッドの下に、誰が落としたかわからない小さな飴の包み紙がひとつ。それを拾い上げようとして、やっぱりそのままにしておいた。その小さなゴミさえも、この旅の賑やかな記憶の一部であるという気がして。四月の京都は、どこへ行っても淡いピンク色の波に飲み込まれている。駅に降り立った瞬間の、あの耳をつんざくような人の波と、絶え間なく流れる案内放送の機械的な音。家族四人で歩くとき、私たちは常に誰かと誰かの間を縫うようにして進んでいた。

喧騒の京都駅にほど近いこの場所へ、なぜ家族で帰りたくなるのか

京都駅からホテルまで、歩いてわずか三分。その短い距離にあるはずなのに、スーツケースのキャスターがアスファルトを叩く規則的な音を聞いていると、次第に外の喧騒が遠のいていくのがわかった。四月の風はまだ冬の名残を孕んでいて、頬を撫でる空気がひんやりと鋭い。けれど、アパホテル〈京都駅東〉の自動ドアが開いた瞬間に流れ込んできたのは、誰かが使い慣れた石鹸のような、どこか懐かしくて温かい香りだった。

家族旅行というものは、常に誰かのペースに合わせるという、静かな交渉の連続だ。上の子は「あっちに行きたい」と言い張り、下の子は途中で歩くのをやめて抱っこをせがむ。そんな「兵荒馬乱」な時間の中で、ここにある静寂は、私たちにとって単なる休息以上の意味を持っていた。チェックインを済ませ、部屋のドアを閉めたとき、外の世界と完全に切り離された感覚があった。それは、激しい嵐のあとに辿り着いた小さな港のような場所。靴を脱いで、裸足で床の滑らかな感触を確かめたとき、ようやく肩の力がふっと抜けた。「ここなら、誰に気を使うこともなく、ただの家族に戻れる」。そんな安心感が、この場所には満ちていた。

子供たちの好奇心を一番に刺激したのは、どんな景色だったか

大浴場へと向かう廊下で、下の子がホテルのスリッパを履こうとして、あまりの大きさに足を取られていた。ペンギンのようにぺたぺたとした足取りで歩く姿に、私たちは思わず顔を見合わせて笑った。そんな何気ない、けれど愛おしい出来事が、旅の記憶に深く刻まれる。大浴場に足を踏み入れると、そこには濃密な温かい湯気が満ちていて、視界が少しだけ白くぼやけていた。

特に子供たちが夢中になったのは、つぼ湯だった。小さな円形の湯船に身を沈めると、とろりとしたお湯が肩まで心地よく包み込んでくれる。下の子がふと、「お湯はどこから来るの?」と不思議そうに聞いてきた。私たちは答えに詰まったけれど、その純粋な問いこそが、子供にとっての旅の正体なのだと思う。大人は「温泉があるからいい」と機能で考えるけれど、子供は「お湯の温度」や「水の揺れ」という、剥き出しの感覚で世界を捉えている。

露天風呂に出ると、四月の夜風が火照った肌に心地よく当たり、空には深い紺色の夜が広がっていた。お湯に浸かりながら、子供たちの小さな肩がゆらゆらと揺れている。大人の悩みなんて、このお湯の温度に溶けて消えてしまえばいいのに。そう願わずにはいられなかった。水しぶきが上がるたびに、子供たちの笑い声が白い湯気に混ざって、心地よいリズムを刻んでいた。豪華な観光地を巡るよりも、ただ一緒に温かいお湯に浸かっていたあの時間の方が、ずっと贅沢だったという気がする。

旅の終わり、チェックアウトの瞬間に心に刻まれているものは何か

最終日の朝、キングベッドルームの大きなベッドに、家族全員で潜り込んだ。シーツのパリッとした清潔な質感と、体を優しく押し返す適度な弾力。そこは、私たち家族だけの「共有の島」だった。誰がどこに寝ているのかわからないほどに重なり合って、もぞもぞと場所を譲り合う。そんな、少しだけ窮屈で、けれどたまらなく温かい時間。

窓の外では、また新しい一日が始まり、京都の街がゆっくりと動き出している。京都タワーが見える方向から、また多くの旅人がやってくるだろう。でも、私たちはもう急ぐ必要はなかった。パッキングを終え、忘れ物がないか確認しながら、部屋の隅に残ったあの飴の包み紙をもう一度見た。それを拾わなかったのは、この不完全で、少しだけ乱雑な時間が、そのままの形で記憶に残ってほしいと思ったからかもしれない。

旅が終わるとき、心に残るのは有名な寺院の壮麗な景色ではなく、ホテルの部屋で一緒に食べたコンビニのお菓子や、お風呂上がりにみんなで着たパジャマの柔らかな感触。そんな、名もなき断片的な記憶。アパホテル〈京都駅東〉という場所は、私たちにとって、そんな小さな幸せを丁寧に保存するための、心地よい容器のような場所だった。

靴を履き、再び外の冷たい空気に触れたとき、子供の手が私の指をぎゅっと握った。

  • 京都駅から徒歩三分という好立地のため、小さなお子様連れでも移動のストレスを最小限に抑えられます。
  • 大浴場にあるつぼ湯は、お子様と一緒にゆったりと浸かれるため、一日の疲れをリセットするのに最適です。