← 戻る AMANE RESORT GAHAMA

湯気の中で、誰かが笑った気がした

裸足で踏みしめたフローリングのひんやりとした感触が、心地よく足裏に伝わる。プレミアムフラットルームの広々とした空間を、下の子が全力で駆け巡り、その距離で部屋の大きさを測っていた。彼にとってここは単なる宿ではなく、未知の領域が広がる冒険の地図なのだろう。「ねえ、お湯はどこから来るの?」不意に立ち止まって問いかける純粋な瞳。答えを持たない私たちは、ただ顔を見合わせて小さく笑い合った。別府上人ヶ浜温泉ホテルアマネリゾート ガハマの静謐な廊下に、軽やかな足音がリズムを刻んでいく。


肩まで深く浸かると、とろみのある濃厚な温度が、一日中張り詰めていた心と体の強張りをゆっくりと解きほぐしていく。鼻腔をくすぐる硫黄の香りと、視界を白く塗りつぶす濃密な湯気。すぐ隣でバシャバシャと水を跳ね上げる子供たちの歓声が、まるで遠い異国の出来事のように心地よく響く。孤独とは寂しさのことではなく、こうして愛する者に囲まれながら、自分だけの静寂を深く呼吸できる瞬間のことを言うのかもしれない。お湯の心地よい重力が、私を深い安らぎの底へと沈めていく。
窓の外では、冬の海が低く、重厚な声を上げていた。寄せては返す波の音が、部屋の中の賑やかさを優しく包み込み、心地よいリズムを刻んでいる。ふと耳を澄ませると、上の子が小さく鼻歌を歌っていた。どこかで聞いたことがある旋律だが、少しだけ音程が外れている。けれど、その不完全さが今の私たちには心地よかった。完璧な調和よりも、少しだけズレた音階の方が、記憶の襞に深く、鮮やかに刻まれる気がする。
レストランで出された地元の食材の甘みが、舌の上でゆっくりとほどけていく。大分産の新鮮な魚の脂が、炊きたての白い湯気を上げるご飯にじわりと染み込む。下の子が、苦手な野菜をこっそりと隣の皿へ移動させようとする。それを知りながら、私はあえて見ないふりをした。そんな小さな共犯関係が、旅の夜を密やかな賑やかさで満たしていく。味覚とは単なる感覚ではなく、その時の空気や、向かい合って座る人の柔らかな表情まで含めて記憶されるものなのだろう。
二月の午後の光は、淡い水色に染まり、どこか儚げな表情をしていた。テラスへ出ると、遠くに点在する梅の花が目に入る。紅白の小さな色彩が、冬のモノトーンな景色にささやかな句読点を打っていた。海面に反射した光が、きらきらとした粒となって部屋の隅々まで舞い込んでくる。その光の粒子を追いかけて、子供たちが指を差してはしゃいでいた。世界がこんなにも単純なことで輝くのだと、彼らの澄んだ瞳を通して思い出した気がした。
床に脱ぎ捨てられた、ぶかぶかの白いバスローブ。大人のサイズを無理に羽織った子供が、裾を引きずりながらおどけて歩いている。厚みのある生地の感触と、洗濯されたばかりの清潔な香りが、この場所が提供してくれる「許し」のように感じられた。ここでは、服が乱れていても、予定通りに動けなくても、誰もそれを咎めない。ただ、そこに在ることだけが許される。その絶対的な安心感が、心地よい重みとなって心に馴染んでいく。
深夜、大きなベッドに家族全員が身を寄せ合って横になる。誰がどこにいるのか分からないほどに密着し、お互いの体温だけが確かな情報として伝わってくる。外ではきっと冷たい冬風が吹き荒れているだろうが、この厚い布団の中だけは、世界で一番安全なシェルターだ。明日になればまた、誰かが泣き、誰かがわがままを言う日常が戻ってくる。けれど今はただ、規則正しい寝息だけが部屋を満たしている。この静寂こそが、私たちが一番欲しかった贈り物だったのかもしれない。AMANE RESORT GAHAMAで過ごした時間は、家族の絆を静かに、けれど深く結び直してくれた。

湯気に溶けた笑い声が、まだ耳の奥で優しく響いている。

  • 子供と一緒に早朝の海辺を散歩し、冬の澄んだ空気と波の音を五感で味わってみてください。
  • 広いお部屋で家族と一緒に塗り絵やパズルを広げ、あえて「何もしない贅沢な時間」を共有してみてください。