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浴衣の裾をひきずって走る音

心に刻まれた、家族の記憶を奏でる五つの音

下呂の街を流れる川の、低く唸るような水音。ベランダに出たとき、冷たい霧に包まれた景色を眺めていた長男が「川が怒ってるみたい」と小さく呟いた。都会の乾いた騒音とは違う、湿り気を帯びて空気を震わせる重い振動。その圧倒的な自然の響きに身を委ねていると、日々の生活で抱えていた小さな悩みごとが、ただの水しぶきのように消えていく気がした。

「お風呂に怪獣はいるの?」という次男の、震えるような囁き声。大江戸温泉物語Premium 下呂本館 / Oedo Onsen Premium Gero Honkan の大浴場の入り口で、不安そうに私の指をぎゅっと握りしめながら。立ち上る白い湯気に視界が遮られるなか、答えなんて誰にもわからないけれど、私たちは一緒に「たぶん、とっても優しい怪獣が住んでるよ」と想像し合った。正解を出すことよりも、こうして一緒に迷い、空想に耽る時間こそが、何よりの贅沢に感じられた。

バイキング会場で、お皿に料理が重なるカチャカチャという賑やかな金属音。香ばしく焼き上げられた飛騨牛の濃厚な香りが漂うなか、子供たちがどっちが先に大好物を獲るかで言い争っている。賑やかすぎて耳が痛いくらいだけれど、その混沌としたリズムこそが、私たちが「家族」であることの確かな証明なのだと思えた。賑わいという名の温もりが、お腹も心も満たしていく。

和洋室の廊下を走る、浴衣の裾が床を擦るシュルシュルという軽やかな音。サイズが合わず、ぶかぶかの袖を振り回して走る子供たちの、不格好で愛らしい後ろ姿。上品な旅とは程遠い光景だけれど、その疾走感に、ふっと肩の力が抜けた。ここでは、完璧に「ちゃんとして」いなくていいのだという深い安心感が、畳の感触とともに足元から伝わってきた。

露天風呂で、冷たい11月の空気が肌に触れた瞬間の、静かな吐息。熱い湯に深く浸かり、ふっと顔を出したときに肺へ流れ込む、鋭く澄んだ冬の入り口の匂い。子供たちが水しぶきを上げて笑い、その直後に訪れる一瞬の静寂。熱い湯と冷たい風という鮮やかな温度差が、心地よい充足感となって胸の奥にゆっくりと溜まっていく。

使い古された枕に、小さな手がそっと重ねられて眠っている。

  • 飛騨牛を堪能できるバイキングは必見。その濃厚な旨味が、旅の記憶をより鮮やかに彩ってくれるはず。
  • お風呂上がりには、館内のエンタメ施設で子供たちと全力で遊ぶこと。それが最高の睡眠への近道になる。