← 戻る イマジン ホテル&リゾート函館

畳の上で、小さな足音が踊っていた

畳の上で、小さな足音が踊っていた

凍てつく風と、賑やかな荷物たちの行方

2月の函館空港に降り立った瞬間、肺の奥まで凍りつくような鋭い冷気が、容赦なく肌を刺した。吐く息は真っ白な煙となり、それを追いかけて走る次男の足取りは、寒さのせいかどこかぎこちない。空港から車で数分、イマジン ホテル&リゾート函館の自動ドアが開いたとき、外の刺すような冷気と室内の柔らかな温もりが混ざり合い、肌の上で心地よい境界線が生まれた。ロビーに漂うかすかなアロマの香りが、旅の緊張で強張っていた心をゆっくりと解きほぐしていく。チェックインの手続きの間、長男はロビーの開放感に興奮し、小さな靴音をリズミカルに響かせて端から端まで走り回っていた。「静かにして」と口では言いながらも、その無邪気な躍動感に、私の心も自然と弾む。山積みのスーツケースを前に、「僕が持つ!」と競い合う子供たちの喧騒が、高い天井に反響して心地よい音楽のように聞こえた。冷たい金属のハンドルを握りしめながら、この心地よい混乱こそが、冬の旅が始まった合図なのだと確信した。霜の結晶が窓ガラスの隅から静かに広がっていくように、私たちの旅もまた、予測不能な方向へ枝分かれし始めている。そんな予感に、胸が高鳴った。

予定外の「秘密基地」で見つけた、家族の笑い声

観光地を巡る計画よりも、子供たちが夢中になったのはホテル内にあるゲームルームだった。ピンポン玉がテーブルを叩く「パチン、パチン」という乾いた音が、心地よいリズムを刻む。次男はラケットを振るたびに体が回転してしまい、結局ボールを追いかけてテーブルの下に潜り込んでいた。私がかっこよく見せようと構えたものの、実際には空振りしてバランスを崩し、あわや転倒しそうになったとき、長男が「パパ、下手すぎ!」と屈託なく笑った。その純粋で残酷な笑い声が、廊下の静寂を心地よく塗り替えていく。その後、レストランのバイキングへ向かうと、北海道産のホタテが運んできた濃厚な海の香りと、ぷりっとした弾力が冷えた体にじわりと染み渡った。口の中でほどける甘みは、まさに北国の海の記憶そのものだ。子供たちは、見たこともない色の料理を皿に盛り付け、「これは何?」と何度も聞いてくる。その好奇心に満ちた瞳は、冬の澄んだ空気のように透き通っていた。ファミコンのボタンを連打するカチカチというプラスチックの音を囲んで、親子で言い合いながらゲームに没頭する。それは、大人が計画した「優雅なリゾートステイ」とは程遠いけれど、誰にとっても心地よい、不規則で贅沢なリズムだった。

湯気に溶け出す、静寂という名の贅沢

夜、子供たちがオーシャンルームの畳の上で丸くなって眠りにつくと、部屋には深い静寂が訪れた。い草の乾いた香りがゆっくりと鼻をくすぐり、布団の心地よい重みが心まで解きほぐしていく。私たちは、子供たちが完全に夢の中へ落ちるまで、久しぶりに二人で静かに座っていた。窓の外には、闇に溶け込んだ2月の海が広がっている。水平線は見えないけれど、遠くで密やかに囁く波の音が、心地よい子守唄のように聞こえてきた。この静けさは、孤独ではなく、共有された安らぎという形をしている。その後、展望露天風呂に浸かると、熱い湯気が視界を白く染め、頬を刺す冷たい外気が「今、ここに生きている」という実感を皮膚に刻みつける。お湯に肩まで浸かり、ふぅと深く息を吐き出す。その瞬間、心の中に溜まっていた名もなき疲れが、白い湯気と共に夜空へ溶けていくのがわかった。霜の結晶が窓に張り付いて繊細な模様を描くように、私たちの家族の記憶もまた、バラバラで、けれど確かな繋がりを持って積み重なっていく。誰かが欠けていても、あるいは誰かが騒がしくても、この不完全な形こそが、私たちの正体なのだろう。

「またね」が言えない、名残惜しい朝の温度

チェックアウトの日、次男は「まだピンポンしたい」と、ホテルの入り口でわざとゆっくり歩き始めた。長男も、お気に入りのゲームコーナーに名残惜しそうに手を振っている。私たちは、少しだけ寂しさを抱えたまま、イマジン ホテル&リゾート函館の扉を抜けた。外の空気はまだ刺すように冷たいけれど、心の中には、あの温かい湯気と子供たちの笑い声が、小さな種のように残っている。完璧な旅ではなかった。むしろ、至る所で小さな混乱があったけれど、だからこそ、この冬の景色は色褪せない記憶になるだろう。私たちは、またいつか、この不規則なリズムに戻ってきたいと思った。

  • 函館市熱帯植物園はホテルから徒歩2分。冬の朝、緑の温室へ逃げ込むのは、子供にとっても大人にとっても最高の贅沢です。
  • 2月中旬から始まる梅まつりへ足を伸ばして。凛とした空気の中で漂う梅の香りは、冬の終わりと春の訪れを同時に教えてくれます。