← 戻る ホテルフォルツァ札幌駅前

白いベッドで跳ねた、小さな足音

記憶に刻まれた、旅の五つの音

キャリーケースの車輪が、ホテルフォルツァ札幌駅前のロビーに敷かれた、雪や氷の煌めきを模した磨き抜かれた床を叩く乾いた音。天井からの光がプリズムのように屈折して足元に色鮮やかな光の粒を散らばらせており、上の子が「見て、虹がある!」と弾んだ声を上げた。チェックインを待つ間、その小さな靴音が不規則に、けれど軽やかに響くたび、旅が本当に始まったのだという実感が、指先の温度をじわりと上げる。

ロビーのバーエリアで、ワインサーバーから液体がグラスに注がれる「トクトク」という低く、密やかな音。指先に伝わる冷えたクリスタルガラスの硬質な感触に触れた瞬間、張り詰めていた日常の緊張がほどけ、肩の力がふっと抜けていく。隣では下の子が浴衣の帯と格闘し、帯がずれるたびに「あーっ!」と小さな悲鳴を上げているが、その愛らしい喧騒さえも、冷たい白ワインの爽やかな喉越しと共に、心地よく溶けていった。

リラクシングダブルの部屋に入り、シモンズ製ベッドに思い切り飛び込んだときの「ポンッ」という弾む音。肌に触れるシーツのひんやりとした清潔な感触と、身体を優しく、けれど力強く押し戻す贅沢な反発力に、子供たちは歓喜して跳ね回っていた。大人は「静かにして」と苦笑しながらも、自分も一度だけ深く沈み込み、まるで深い森の苔の上に横たわったかのような安らぎに身を任せる。この柔らかさがあるなら、明日の早起きも案外悪くないかもしれない。

朝食ビュッフェの会場で、お皿とカトラリーが触れ合う賑やかな金属音。北海道産とうもろこしの濃厚で甘い香りが、白い湯気と共に空間いっぱいに漂い、子供たちが「どっちが先に全部食べるか」と無邪気に言い争い始めている。賑やかすぎる食卓だけれど、誰一人として不機嫌な者はいない。温かいスープの湯気が眼鏡を白く曇らせるが、その向こうに見える家族の弾けるような笑顔が、なんだかとても誇らしく、胸がいっぱいになった。

窓を開けた瞬間に流れ込んできた、遠くの祭りの囃子と、7月の札幌が運ぶ涼やかな風が運ぶ街のざわめき。カッシーナ・イクスシーの洗練されたモダンなインテリアに囲まれた部屋の中で、家族四人が肩を寄せ合い、どこまでも高い青い空を眺めている。完璧なスケジュールなんて最初からなかったけれど、この不完全で贅沢な静寂こそが、私たちが一番欲しかったものだったのだという気がして、心地よい溜息が漏れた。

裸足で踏んだタイルのひんやりとした冷たさと、隣で眠る子供の規則正しい呼吸だけが満ちる夜。

  • JR札幌駅南口から赤レンガ庁舎まで、子供の手を引いてゆっくりと歩き、北国の澄んだ空気を胸いっぱいに吸い込んでみる。
  • 一日の終わりに、ロビーのワインサーバーで自分へのご褒美を。グラスに結ぶ露の冷たさが、心地よい疲労感を癒やしてくれる。