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靴底に残った、少しだけ冷たい春の記憶

靴底に残った、少しだけ冷たい春の記憶

境界線を越えた瞬間の、二つの記憶

(友人Aの記憶)
JR札幌駅の西改札を出て、右に曲がり、左へ。わずか一分という短い距離だったが、僕の記憶に深く刻まれているのは、四月の札幌の空気が肺の奥まで突き刺さるような、あの鋭い冷たさだ。京急 EXホテル 札幌の自動ドアが開いた瞬間、外の凍てつく冷気とロビーの柔らかな温もりが激しくぶつかり合い、目に見えない境界線がゆらゆらと揺れていた。セルフチェックイン機の無機質な光と、指先に伝わるカードキーの硬い感触。効率的なシステムに囲まれ、「よし、完璧な旅の始まりだ」と密かにガッツポーズをした。モデレートダブルAの部屋へ向かう足取りは、期待で軽く跳ねていた。

(友人Bの記憶)
駅を出てからホテルに着くまで、誰が一番早く看板を見つけるか賭けていたっけ。結局僕が勝ったけれど、誰も気にしていない様子だった。僕が覚えているのは、ロビーに足を踏み入れた瞬間に広がった、突き抜けるような開放感だ。高い天井から降り注ぐ光が、まるでプリズムを通したように柔らかく拡散している。焙煎されたコーヒーの香りが、冬眠から覚めたばかりの街の湿った匂いと混ざり合い、心地よい安らぎを運んできた。チェックインの手続きなんてどうでもよくて、ただラウンジの深いソファに身を沈め、この街が刻む静かなリズムに耳を澄ませていたかった。そんな心地よい倦怠感に包まれていた記憶がある。

同じ食卓、異なる味の記憶

(友人Aの記憶)
地下一階のカフェで味わった朝食。僕が忘れられないのは、北海道産のバターが焼きたてのトーストにゆっくりと溶けていく、あの黄金色のグラデーションだ。ナイフを入れた時のサクッという乾いた快音と、口いっぱいに広がる濃厚な乳製品のコク。温度が完璧だった。添えられていた地元の野菜からは、土の匂いがするような力強い甘みが溢れ出し、五感を激しく刺激した。空腹というフィルターを通して味わう食事は、どんな高級料理よりも誠実で、僕たちの旅が現実のものになったことを確信させてくれた。胃の奥からじわりと広がる温かさが、旅の緊張を心地よく解いていった。

(友人Bの記憶)
味よりも、あの空間に漂っていた「あわい時間」を鮮明に覚えている。まだ半分眠っている僕たちの、ぼそぼそとした意味のない会話。コーヒーカップから立ち上る白い湯気が、窓の外の淡い光に溶けていく様子は、まるで動く水彩画のようだった。隣のテーブルから聞こえてくる、見知らぬ旅人が計画を立てる話し声が、心地よいノイズとなって耳の奥で共鳴していた。トーストを口に運ぶ手さえもゆっくりに感じる、贅沢な停滞感。美味しいのは当たり前で、それよりも「まだどこへも行かなくていい」という絶対的な安心感に包まれていた。あの静寂こそが、最高の調味料だったと思う。

唯一、僕たちが分かち合った真実

結局、僕たちがこの旅で唯一、完全に同意したのは、四月の札幌の風が驚くほど気まぐれだったということだ。大通公園を歩いている時に不意に頬を撫でた風は、春の訪れを告げる温かさを纏っていたが、次の瞬間には冬の忘れ物のような冷たさを運んできた。そんな矛盾した温度に、僕たちは同時に「今、季節が入れ替わった」と感じた。コネクティングルームの広いベッドで、誰が端っこに追いやられるかで言い争ったくだらない夜も、今となってはあの風の気まぐれさに似ている。正解なんてなくていい。ただ、同じタイミングで同じ風に吹かれた。それだけで、十分すぎるほどだった。

濡れたアスファルトに反射する街灯が、ゆっくりと滲んで消えていった。

  • JR札幌駅北口から徒歩一分。迷う暇もないけれど、あえてゆっくり歩いて空気の変わり目を探してほしい。
  • ラウンジのワークスペースで、旅の途中にふと思い出した「どうでもいいこと」をメモに残してみて。