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午前7時のコーヒーと、冷たい空気の境界線

午前7時のコーヒーと、冷たい空気の境界線

札幌駅の北口に降り立った瞬間、肺の奥まで突き刺さるような鋭い冷気が流れ込んできた。誰が一番先に「寒い」と口にするか賭けていたけれど、結局は全員同時に肩をすくめて、白い息を吐き出した。京急 EXホテル 札幌までの距離はわずか徒歩1分。旅が始まったという高揚感に浸る間もなく、私たちはフロントに辿り着いた。駅の喧騒という激流から、ふっと静かなプールに飛び込んだような、心地よい断絶感に包まれた。



立ち上る湯気がメガネを白く塗りつぶす。スープカレーの器から漂う、クミンと根菜の濃密な香りが鼻腔を刺激した。スプーンを動かすたびに、深いオレンジ色のスープがゆっくりと波紋を描く。口の中は火傷しそうなほど熱いのに、肌に触れる空気は10月の冷徹な冬の予感。その激しい温度差に、ようやく北海道に降り立ったという実感が、じわりと身体に広がっていった。


「この部屋、効率的すぎない?」誰かが苦笑いした。モデレートダブルAの空間は、無駄を削ぎ落とした水槽のようにクリアで機能的だ。けれど、荷物を広げた途端に足の踏み場がなくなり、お互いの靴下が転がっている光景に、なんだか言いようのない安心感を覚えた。狭い空間で肩がぶつかり合うたびに、言葉にしなくても通じ合っている気がして、それがたまらなく心地よかった。


ラウンジのふかふかのソファに身を沈め、誰が一番「意識高い系」な顔で本を読めるか競い合った。結果、3ページ目で全員が深い眠りに落ちる。静まり返った空間に、誰かの小さな寝息が穏やかな波を立てていた。こんなかっこ悪い姿をさらけ出せる距離感こそが、私たちの旅の正解なのだろう。結局、本の内容なんて誰も覚えていないけれど、そんなことがどうでもいいと思える時間が、何よりの贅沢だった。


深夜のロビー。開放的な空間に、自分たちの足音だけが低く、心地よく響き渡る。街の喧騒は遠い記憶のように消え去り、まるで深い水底に沈んでいるかのような、外の世界から切り離された感覚に陥った。ひんやりとした静寂が、冷えた肌にぴたっと張り付いている。誰が何を考えているのかは分からないけれど、同じ静寂を共有しているだけで十分だという気がした。


ウェルカムコーヒーの香ばしい香りが、ぼんやりとした意識を優しくくすぐる。カップから立ち上る白い湯気が、ゆっくりと夜の空気に溶けていく。指先に伝わる陶器の熱。その確かな温もりが、冷え切った指先から体温をゆっくりと呼び戻してくれる。コーヒーの心地よい苦味が、意識を鮮明にし、次の目的地へ向かうための小さな灯火になった。


大通公園の紅葉が、冷たい風に煽られて激しく舞っていた。鮮やかな赤い葉が、まるで水流に流される魚の群れのように視界を横切っていく。誰かが「見て!」と叫び、みんなで同じ方向を見た瞬間、世界が濃い朱色に染まった。計画にない寄り道だったけれど、その偶然が今回の旅で一番鮮やかな色を持っていて、私たちはただ、言葉を失ってそれを見つめていた。


スーツケースのジッパーを閉める時の、あの独特の抵抗感。旅の記憶を無理やり詰め込んだみたいで、少しだけ心苦しくなる。けれど、同時に次の計画を立てる時の、あの根拠のないワクワク感が胸を叩く。それが、私たちの旅を回し続けるエンジンなのだろう。京急 EXホテル 札幌のドアを閉める乾いた音が、心地よい余韻となって、私たちの背中をそっと押してくれた。

時計台の針が静かに刻む、規則正しいリズムだけが響いていた。

  • 札幌駅北口からホテルまで、あえてゆっくり歩いて空気の温度変化を楽しんでみて。
  • ラウンジでコーヒーを飲みながら、あえて計画を全部白紙にする贅沢を味わって。