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冷たい指先と、笑いすぎた夜の静寂

冷たい指先と、笑いすぎた夜の静寂

僕たちの「迷走」を静かに見守っていた5つのもの

180cm幅のキングベッド:指先に触れるリネンのひんやりとした感触と、洗いたての石鹸が混ざり合う清潔な香り。ここが、誰が真ん中で寝るかという、大の大人が本気で争った泥沼の領土争いの戦場になったことを、この真っ白なシーツはすべて覚えている。「ここから先は僕の領域だ」という、くだらない宣言と共に繰り広げられた枕投げの喧騒を、静かに受け止めてくれていた。

大浴場の濡れたタイル:立ち上る白い湯気の熱と、足裏に伝わる石のひんやりとした温度。2万歩も歩けば完璧な旅になると言い切ったリーダーが、湯船に浸かった瞬間に「もう一歩も動けない」と白旗を上げた、あの情けない瞬間を目撃していた。濡れた足音が心地よく響く廊下で、僕らは疲れ果てて、でもどこか満足そうに、ただぼーっと天井を見上げていた。

ロビーに並ぶ山鹿灯籠:視界を柔らかく染める琥珀色の光と、静謐な空間に漂う洗練された空気感。それが、どの前菜を注文するかで40分間も議論を戦わせていた僕らの、ひどく不毛で、けれど愛おしい時間を見守っていた。スタッフの方が、丁寧ながらも「いい加減に決めてください」という視線を送っていたことに、僕らだけが気づかなかったという事実は、今思い出しても少し恥ずかしい。

窓から見える阿蘇の遠景:2月の夜明け前の、青白く凍てついた空気の匂いと、指先を刺すような窓ガラスの冷たさ。地図を読み間違えて、全く違う方向に1時間も歩き続けたことに気づいた時の、あの絶望的な静寂をこの景色は知っている。けれど、その絶望のあとに誰かがふっと笑い出し、連鎖的に爆笑が起きたとき、ガラスに付いた僕らの白い吐息が、なんだか誇らしげに見えた。

朝食ブッフェの白い皿:炊き立てのご飯から上がる甘い湯気と、地元の果実の酸味のある香り。冬眠に備える動物のように、皿の上に山盛りにして食材を積み上げていた僕らの、食欲という名の野生を見た。皿が触れ合うカチカチという軽快な音に包まれ、誰の皿が一番「盛り盛り」かという、くだらない賭けに興じていた時間は、きっとこの旅で一番、僕らが自分らしくいられた瞬間だった。

もしこれらの物たちが口を揃えて話すなら

彼らはきっと、僕らのことを「騒がしくて、計画性がなくて、けれど不思議と調和していた集団」と呼ぶだろう。THE BLOSSOM KUMAMOTOの洗練された静寂の中に、僕らという不純物が混ざり合ったとき、そこには心地よい不協和音が生まれた気がする。Standard Roomの整った空間に、脱ぎ捨てられた靴下や、深夜まで止まらなかったとりとめもない会話。それは、冬の凍った土の中でじっと耐えていた種子が、ふとした拍子にパキリと殻を破る瞬間に似ていた。高級なホテルのしつらえに身を任せながら、中身はいつまでも子供のままの僕ら。そんなギャップこそが、この旅の正体だったのだと思う。

朝日が差し込む部屋で、脱ぎ散らかされた靴が不揃いに並んでいるのを眺めていた。

  • 予定を全部捨てて、梅まつりの会場でわざと迷子になってみるのがおすすめ。
  • ラウンジの灯籠の光に包まれながら、普段は言えない「くだらない本音」を話し合ってほしい。