靴を脱いだ瞬間、足の裏が覚えたもの
草津の8月は暑い。玄関を入ったとたん、空気は湯気のような重さを帯びていた。榻榻米の表面は、さっきまで裸足で歩いていた子供たちの汗を吸い込んで、うっすらとぬるくなっている。靴を脱いだ足の裏が、そのぬくもりを感じたとき、子供たちはもう走り出していた。
「お父さん、見て!この部屋、すごい広い!」
老大は12畳の和室の真ん中で回転しながら叫んでいた。老二は隅っこで靴下を脱ぎ散らかし、床に這いつくばって何かを探していた。彼らにとって、ここはただの部屋じゃない。
「お風呂は?お風呂はどこ?」
老二の声が、榻榻米に吸い込まれていった。
子供が見つけた「隠れ場所」
宴会場の隅にあった木製の棚。老大はそこに足をかけて、隠れ場所を作っていた。
「ここ、秘密基地!」
彼はそう言って、棚の下に潜り込んでしまった。老二も続こうとしたが、棚が小さすぎて入れなかった。
「おにいちゃん、入れない!」
老大は棚の下で笑いながら、老二に手を差し出した。
「ここに入れ!」
老二はそれを握って、棚の下に潜り込んだ。二人はそこで、祭りの写真を撮った携帯を取り出して、交互に見ていた。
「この人、誰?」
「知らない。おばちゃんが踊ってる」
「おばちゃんすごい!」
彼らの声は、木の香りに包まれていた。
子供たちが眠ったあと、私たちが見つけたもの
宵宮の盆踊りが終わったあと、私たちは浴衣の裾をたくし上げて、足を引きずるように高松に帰ってきた。玄関の灯りはついていたが、廊下は静かだった。
老大は布団に入ったとたん、鼾をかき始めた。老二は布団に潜り込みながら、「お祭り、楽しかったね」とつぶやいて、すぐに眠った。
私たちは部屋の扉を閉めた。榻榻米が床を這うような、微かな音がした。
浴室に向かうと、脱衣所のタイルは冷たくなかった。温泉の余熱が、床全体を暖めてくれていた。
浴池に足を踏み入れた瞬間、温泉の水が足の裏を包み込むのを感じた。
「今日、老二が初めて盆踊りの輪に入ったんだ」
妻がそう言って、湯船に肩まで浸かった。
「老大はずっとおばさんの後ろについてただけだったけどね」
私はそう言って、湯船の縁に手を置いた。温泉の水が指の間から流れ落ちていった。
「でも、二人とも楽しそうで良かった」
妻はそう言って、目を閉じた。
浴池の底から、温泉の泡が上がってきた。
足の裏が榻榻米のぬくもりを覚えている
- 祭りの余韻をそのままに、子供と一緒に温泉に浸かる「草津温泉喜びの宿 高松」の家族風呂プラン(要事前予約)
- 盆踊りの会場から飯店まで徒歩15分。子供が疲れたら、飯店のスタッフがおんぶ紐を貸してくれるサービスあり