← 戻る 草津温泉 きむらや

湯気の向こうで子供たちが笑っていた

湯気の向こうで子供たちが笑っていた

荷物が重かった午後

エレベーターの扉が閉まる直前、老二が「待って!」と叫んで飛び込んできた。靴を履いたままの足が、タイルの上で小さく滑った。荷物は重かった——老大のスキー板、老二のぬいぐるみ、そして母親の手が滑りそうになるカバン。フロントに近づくにつれて、足の裏が冷たく感じた。受付のスタッフが微笑んで、「草津温泉 きむらやへようこそ」と声をかけてくれる。老二が「お sisters は?」と聞くと、スタッフは「こちらにはお姉さんはいませんが、梅まつりの時期ですので、きれいな梅の香りがしますよ」と答えた。

部屋に入った瞬間、老大は「広い!」と叫んだ。シングルルームとは思えない広さに、埃っぽい空気が動く。布団の匂いは、母親が子供の頃に使っていた布団に似ていた。老二は「ここ、お姫様のお城みたい!」と言って、窓際のカーテンを引っ張った。外はまだ明るかったが、雪の残りがうっすらと見える。母親はソファに座り、ため息をついた。荷物を解く手が止まる。ようやくここに来たのだ。



子供たちが見つけた小さな宝物

夕食前、子供たちは温泉に行きたがった。浴衣に袖を通すと、老二は「お母さん、これって何?」と袖口を指差した。浴衣の裾が床を擦る音が、廊下の向こうまで響いた。

湯畑は、白旗源泉から流れてくる湯気が、空気を揺らしていた。老大は「お湯が青い!」と言った。確かに、蛍光灯の下で見ると、お湯は青みがかっていた。老二は「魚がいる!」と叫んだが、それは自分の足の指だった。

帰り道、老大が「節分の鬼はどこ?」と聞いた。母親は「たぶん、山の向こうに隠れてるよ」と答えた。老二は「じゃ、バレンタインのチョコ、食べちゃう?」と聞いた。母親は「それは食べるためのものだよ」と答えた。

部屋に戻ると、机の上に小さなプレートが置かれていた。バレンタインチョコレートの包装紙が、テーブルの上で光っていた。子供たちは「誰が置いたの?」と口々に聞いた。母親は「きっと、スタッフさんが」と答えた。



大人だけの時間が流れていった

子供たちは布団の中で寝息を立てていた。老大は「今日、何日?」と聞いたが、すぐに寝息に変わった。母親は布団から出て、窓際に立った。窓の外は暗く、静かだった。しかし、湯気の匂いが部屋中に広がっていた。

脱衣所の鏡に自分の顔が映った。化粧を落とした後の肌は、普段より白く見えた。母親は鏡の前でため息をついた。指先が冷たかった。

隣の部屋から、老二の寝言が聞こえた。「お姉さん、梅まつりのチョコレート……」

母親はソファに座り、携帯を手に取った。画面には「草津温泉 きむらや」と書かれた写真があった。



帰りの車の中で

チェックアウトの時間が近づくにつれ、老二は「もう帰りたくない」と言った。老大は「でも、スキーはしたかったから」と言った。母親は「また来ようね」と答えた。

駅までの道のり、子供たちは「次はいつ来る?」と聞いた。母親は「梅まつりの時期に」と答えた。老二は「梅の花、きれい?」と聞いた。母親は「うん、きっときれいだよ」と答えた。

車に乗り込むと、まだシートが暖かかった。老大は「次はバレンタインのチョコ、食べよう」と言った。老二は「でも、今日のチョコの方がおいしかった」と言った。母親は笑った。

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  • 草津温泉 きむらやの客室からは、湯畑の青いお湯が見える。朝7時の光で、その青さが一段と鮮やかになる。

  • 白旗源泉までは徒歩1分。夜更けに行けば、湯気が幻想的に立ち上るのが見える。