← 戻る SHIRAHAMA KEY TERRACE HOTEL SEAMORE

子どもの足音がカーペットに沈む頃

白浜の海辺を歩く風の匂い

9月の白浜の道は、秋祭りの準備で少しだけ忙しい。ススキが風に揺れ、盆栽のような石灯籠が店先に並んでいる。その石灯籠は、海辺の塩分を含んだ空気に触れて、うっすらと白く輝いているように見える。子どもたちは靴の底でアスファルトの温度を確かめるように歩く。夏の名残の熱さがまだ残っているのか、それとも秋の涼しさが忍び寄っているのか。おばあさんが売る焼き栗の匂いが、通り過ぎる車の窓から漂ってくる。焦げた甘い香りが、季節の移ろいを教えてくれる。

老二が忽然足を止めて「これ、本物のススキ?」と茎を触った。ススキの穂先は、指先で触るとまるで小さな毛皮のようで、柔らかくもザラザラしていた。老大は「お祭りってどういうの?」と聞く。二人の声が混じり合う。老二は「ほら、あのおばあさんの焼き栗みたいに、みんなで集まって何かをするんでしょ?」と想像を膨らませる。老大は「でも、お祭りって海の近くでやるの?」と首を傾げた。

通りの向こうには、SHIRAHAMA KEY TERRACE HOTEL SEAMOREの白い壁が見える。海を一望するそのホテルは、まるで海の波が建物に寄り添うように設計されている。ホテルの屋外テラスからは、BBQの煙が立ち上り、海風に乗って漂ってくる。子どもたちはその煙の匂いに思わず足を止める。老二は「あれ、お肉焼いてるの?」と目を輝かせた。老大は「僕たちも行ってみようよ」と手を引っ張る。

海辺の風は、肌に触れるとまるで冷たい絹のようで、少しだけ塩辛い。波が岸に打ち寄せる音が、遠くから聞こえてくる。まるでホテルの波の音が、この通りまで届いているかのようだ。


浴衣の袖が触れる温度

ロビーの扉を押した瞬間、空気の温度が変わった。外の海風とは違う、ホテル内の空気が肌を包む。浴衣ラウンジのコーナーで、スタッフが浴衣の袖を広げて見せてくれた。色とりどりの布地が触るとさらさらして、子どもたちは思わず袖に顔を埋めた。老二は「これ、触り心地がいい!」と叫び、老大は「この色、僕が選ぶ」と言った。足音がホールのカーペットに吸い込まれる。誰かが「この色、僕が選ぶ」と言う。足音が消える。

浴衣の袖を通したとき、老大は「これ、まるで海の波みたいだね」とつぶやいた。青と白のストライプが、波の模様に見えたのだ。老二は「じゃあ、僕は波の泡みたいな黄色がいい!」と主張した。


部屋の波音が時計になる

客室のドアを開けると、波の音が聞こえた。目の前に青い海が広がっているわけではないのに、波の音だけが部屋に流れ込んでくる。老二はすぐさま窓際に駆け寄った。カーテンの裾が床に触れるほど背が低い。老大はベッドの上でスマホをいじりながら「波の音って、天気予報みたいなんだよね」と言った。老二は「じゃあ、今日の波は晴れマーク?」と聞く。波の音が答えている。

子どもたちは部屋の隅にある小さな机を占領した。老大はそこに自分のおもちゃを並べ始めた。老二は浴衣の裾をたくし上げて机の下に潜り込み、机をトンネルに見立てた。足音がカーペットに沈む。リビングのソファでスマホを操作していた親の指が止まる。波の音と子どもの声が重なる。

夜になったら、波の音だけが残る。波の音が時計の代わりになる。朝の7時には波の音で目覚める。子どもたちは「今日の波、元気?」と聞く。波の音が返事をする。


窓越しの空と月の兆し

部屋の窓から見ると、空は暗くて重い。台風が近づいているのかもしれない。でも、その暗さが海の色を深くしている。ススキが風に揺れる音が聞こえる。どこかで月見の準備が始まっているのかもしれない。

子どもたちはベッドに横になって、波の音を数えている。老大は「10秒に一回波が来る」と言った。老二は「じゃあ、1分で6回」と計算する。波の音が時計の代わりになる。

子どもたちの足音がカーペットに沈む頃、親の肩の力が抜ける。波の音が時計の代わりになる。

  • ホテルの浴衣ラウンジで、家族それぞれの浴衣を選んでみて。子どもたちはきっと布の感触に夢中になる。
  • 客室の窓を開けて、波の音を聞きながら、その日の天気を占ってみて。子どもたちと一緒に数えてみると、楽しい時間が過ぎていく。